第51回  探偵を雇って肉塊探し

人生とは、時の流れとは、今さら言うまでもないが過酷なもの。
それを感ずるのは外国旅行で、特に青い目と金髪の欧米諸国が多い。

欧米の、特にヨーロッパの若い女性は「西洋人形」に例えたいほどの美形である。
オーバーに表現すると、息を呑む美しさである。
腰はこれでもかと高い位置でくびれているし、脚はほっそり長く、
誰もがバレリーナのような美脚を誇っている。

やがて、人生の中盤に差しかかるころには状況が一変する。
町で見かける中年女性を見ると一目瞭然である。
まるで美容関連の使用前、使用後の変貌ぶりとなる。

彼女らの腰周は、いつしか肉塊を段で重ねてくっつけた状態になり、
頭のてっぺんから足のつま先までペーキングパウダーで膨張させたごとく、
脂肪でパンパンに膨れあがる。
かつては細く尖っていた鼻梁も、バラ色だった頬にも肉塊は平等につきまくり、
「あれ、どなたさまでしたっけ?」という具合に、
まったく赤の他人に変貌する。

テレビでたまに放映される日本で暮らす外国人美女の昔と今をごらんになると、
一番わかりやすいかもしれない。

知り合ったころの写真の美女はどちらに?

探偵でも雇って探しに行かなくてはならないほど、
目の前の人物と娘時代の印象はまるで遠く海を隔てたくらい
かけ離れていることもあるようです。

その点、日本の女性はあまり変貌しないようです。

日本女性は脂肪がくっついたとしても、
せいぜい使用期限が切れたペーキングパウダーのように、
ちょこっとしか膨らまない。
それなりに昔の片鱗は残っていて、
無駄な経費を払って探偵に消息を頼まなくても、
その人であることの確認はとれるでしょう。

それでも日本の女性は、自分が太っていると思い込んでいるらしい。
そのせいでダイエットや美容関連は不況知らずの大盛況のようですが、
ある日のテレビ番組「報道特捜プロジェクト」で、
人気のサプリメントの裏側を取材していたが、ぞっとする内容だった。

「報道特捜プロジェクト」で、
人気のサプリメント「コエンザイムQ10」の調査を行ったが、
その結果、成分がほとんど入っていない製品が発覚した。
製品は回収され一件落着したと思われたが、
その後販売されている製品に問題はないのか、
再び人気のサプリメントの分析調査を行った。

ダイエットが期待できるという人気の3成分、
「コエンザイムQ10」「α−リポ酸」「L−カルニチン」入りの製品、
18種類の分析を大学の研究所に依頼。

その結果、表示通りの成分が含まれている製品は皆無。
さらに3成分ともほとんど含まれていない製品まで見つかった。

番組では、なぜこのような製品が製造販売されているのか、
分析で明らかになった3成分がほとんど入っていない製品の販売会社を追及。
さらに、販売会社が委託している製造工場を直撃、内部を徹底取材した。

取材の結果、成分の性質を無視した杜撰な製造方法、
原料を入れ間違えた可能性などの、信じがたい原因が次々に発覚。
ブームの最中で乏しい知識のまま製品を製造、販売していた実態が明らかになった。

販売会社、製造会社とも全面的に非を認め、
その後、製品の自主回収を行ったようだが、製造会社と思われる撮影現場は、
外観はニワトリを飼育しているかのような小屋の印象で、
廊下にはバケツに入った薬品の原料が所狭しと放置されたままの、
なんとも不衛生な状態を晒していた。

このような場所で製造されたものを体内に取り入れるのかとぞっとしたが、
その後、保健所の立ち入り検査も入ったようだ。

さて、西洋人形に憧れを抱く日本の男性は、
日本の女性の涙ぐましい努力を、どう評価するのか。

一番きれいなときにお嫁さんにして、
後の長い残りの年月は目をつむって耐え忍ぶか、
花の盛りはまあまあだけど、
一生なんとか鑑賞に堪えうるだけの余地はあると我慢するのか、
西洋人形に憧れる男性方にとっては悩ましい選択となるようです。


HOME TOP NEXT