第45回  うるさいなぁ

購読している読売には、多方面にわたる好企画が多い。
今回はシリーズ<幸せパレット>の中の
<結婚はしたけれど>にスポットを当ててみたい。

「お前は気楽でいいよなぁ、のひと言で夫婦の関係が冷えてしまった」

この投稿内容にそれぞれ夫婦の立場からメールが寄せられたものである。

36歳の主婦からのメールは「心に突き刺さった」とのこと。
彼女は小学校のPTAの副会長として充実した毎日を送っていたが、
法事の席で夫が「妻の活動はどうでもいいこと」と話しているのを聞いて
力が抜けたという。
「夫婦と言っても別の人格、もっと相手の気持ちを考えて」と訴える。

真面目な人との印象が強かった。

わたしがあまりにもだらしがないのか?
夫から「気楽でいい」「そんなつまらんことを」と言われ続けていますが、
「あら、思うほど気楽じゃないのよ。つまらんなんて失礼じゃない。
 価値観が違うんだから」と、普通の会話の範疇で反論しておしまい。

きっと真面目に突き詰めて考えると、前述の主婦のようになるのかもしれない。
わたしはあまり突き詰めて考えない性質の上に、
なんと言っても相手の気心が知れているので、
あまり気にならないのかもしれない。

42歳の主婦は散歩中に夫の手をにぎろうとしたら「よしてくれ」といわれた。
夫婦生活は年に数回しかないのに、
夫がアダルトビデオを数本持っていたこともわかり、
「お互いを必要とし信じあって結婚したはずなのに」と思うと
涙がこぼれるという。

わたしも夫と外出時に手をつなごうとしたら、
投書の主婦のように「みっともない」とか「恥ずかしい」と言われた。

だから言ってやった。

「どうして? 夫婦なのにそんなことを思う方がおかしいのよ」と、
ぎゅっと手を握った。
もちろん、振り解かれた。
だから手を繋いで歩いている夫婦を見ると
「ほら、アレが正解なのよ」と言い続けた。

キスにしても「みっともない」という夫に「夫婦なら当たり前でしょ?」と、
無理やりに押さえ込んで成功!(ただし家の中だけね)

今でも夫の「恥ずかしながら」の態度は変らないけれど、
握られた手はちゃんと繋いだままになり、
パソコンをしているわたしにオヤスミのご挨拶のキスをしにやってくるから、
長年の調教の成果が実った瞬間である。

もしこれが最初から前述の主婦のように落ち込んでしまったら、
この成果は存在しなかったと思っている。

夫がアダルトビデオを持っていたにしても、
わたしはあまり気にしないと思う。
(まったく持ってはいないけれど)
第一、ビデオレコーダーはほとんど使わないままかなり前に壊れてしまい、
使えたにしても映像の世界まで厳しく取り締まるのは可愛そうな気がする。
でも現実世界だったら「即、離婚ね」と言い聞かせている。

56歳の主婦は「夫に話しかけても返事がない」
テレビを見ているときに夫に話しかけたら「今テレビを見ている」と断られ、
パート先の話をしようとしたら「お前の話はつまらない」と言われ、
何を話していいのかと悩む。

わたしにしても「今テレビを見ている」と言われることは珍しくない。
そう言われるとからかいたくなるから、少しおかしいのかもしれない。

「あらテレビを見ながら話を聞けないの? 平成の聖徳太子にはなれないわねぇ」
「うるさいナァ、ちょっと黙っていて」
「はいはい」でおしまい。

どうも我が家は真面目ではないようですが、
あまり深刻にもならないで結構楽しく暮らしている。

さまざまなメディアから仕入れた結婚のあり方や理想像など、
他人が作り上げたものは一度ぶっ壊して、愛して欲しいと望む前に、
自分から相手を思いやり愛するように心がければ、
必ず道は開けると信じています。

「口はついているの?」というほど類稀なる無口の夫を持ち、
結婚当初はマゴマゴして泣きたくなったり途方にくれたりの連続だった
わたしの経験から言えることです。

その夫も、今では妻から「うるさいナァ」と言われたりしている。
何ごとも調教や訓練は欠かせないもののようです。

時には物事を突き詰めないで方向転換を試みたらどうなのでしょう。
どこか一点でちゃんと繋がっていれば、
会話上の些細な行き違いなどはあまり問題にはならないのでは、
と思っていますが、考えが甘すぎるのでしょうか。


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