第44回  ヤバイはヤバイ

最近では男女平等なる言葉があまり聞かれなくなりましたが、
すっかり定着したのでしょうか。

一時の女性たちは、差別とは言えない性差の垣根までよじ登って、
何もかも均(なら)してしまおうというすさまじさでしたが、
垣根を乗り越えて来た女族は何もかも奪い、
世の中はすでに安泰と言うべきなの?

なぜなら男女平等であるはずの世間に、
女性専用だけのシステムが氾濫しているからである。

わたしは一時期のあのすさまじさを思い起こすとき、
「男女という単語に、なぜ男が先に来るのか?」と、
どこからかイチャモンがつくかと思っていました。
もしイチャモンがついたら「男女」や「父母」の単語は、
どのように変えられるのだろうと興味津津でしたが、
それは無かったようですが、これも不思議。

なぜなのかな?

すこし古くなりますがある日の読売に、
<過度の性差解消教育歯止め、若手が勉強会>のちいさな記事があった。
「健全な教育を考える会」が初会合を開いたとのことだが、
よびかけ人は山谷えり子衆議院議員(当時)である。

「男児に武者人形やミニカー、女児におひな様やままごとセットを与えるのは
(男、女)らしさの押しつけ」とするパンフレットや、
 避妊方法を詳細に教える中学生向けの行き過ぎた性教育問題をとりあげ、
「最大の個性である男女差も尊重すべき」としている。

まったく同感である。

以前にも同様な主旨のコラムを書いた覚えがありますが
<男女の特徴の違い>でさえ<男女差別>とヒステリックに捕え
<性差を均一化してしまう>ことがあたかも<男女同権>のように
勝手に解釈されている風潮があるように思えたからです。

最近の女性の乱暴な言葉遣いもそのひとつですが、呆れています。
しかし、マスコミや有識者がそれらに触れることが
ほとんどなかったような気がする。
そのためか世間的にはほとんど話題にならない。

なぜなの?

もう注意することさえ諦めてしまったの?
男女差別と、とがめられるのを恐れている?

「おい」「おまえ」「てめえ」「マジかよう」「キレた」
「あいつら」「ババア」「ばかやろう」「ヤバイ」

わたしが子供のころこのような言葉遣いをしたら、
ただちにこっぴどく叱られた。

「女の子が、そんな乱暴な言葉遣いをするものじゃありません」

今、わたしが同じ言葉をそれらを使う女性に投げかけたとしたら、
すぐにも反論の声があがるでしょう。

「男女同権だろ、なぜ女が使っちゃいけねえんだよう」

それでもわたしはあえて言いたい。
「女性にそんな汚い言葉遣いをして欲しくありません」
同じ女性という枠組みの中で考えると、
やはり黙ってはいられない心境になる。

女性ばかりではない。
言葉遣いがひどく乱暴な夫にも、わたしはときどきお願いしている。

「その言葉遣い、もうすこしなんとかならないかしら?」

そのせいか、女性の乱暴な言葉遣いを耳にしたときの夫は、
まるで鬼の首でも取ったような様相になる。

そのときはレストランだった。

少し離れた席に2組の子連れの女性たちがいて、
夫はその光景を目の前にして聞こえよがしに言った。

「オイ、オマエだぜ、あれで女か? おまけに母親だから恐れ入るね。
 タバコは吸うし髪はまっ黄色、これじゃあロクな子供が育たないのも当たり前だ」

わたしはハラハラして食事どころではなかった。

夫は思い込みの激しいわたしよりもさらに数段ほど格上の人なので、
世間的には「ブッ・ブー」の発言が多い。
夫婦だけのときは問題はないけれど、
公衆の面前となるとかなりヒヤヒヤさせられる。

髪の毛が黄色くても、タバコを吸っていても、
ちゃんと子育てをしている元ヤンキーという若い女性を、
テレビ番組で見たことがあるが、彼女の子育てぶりに敬服した。
苦労の種と言われている子育てを「楽しんでいる」と明るく言い、
のびのびと子供に接する彼女の姿に感動した。
ヤンキーのころはそれなりの言葉遣いだったと思われるけれど、
テレビでの彼女の言葉遣いはごく普通だった。

言葉遣いは、その人物像を映しだす大切な鏡でもあると思っています。

乱暴な言葉遣いをして粋がっている女性を見ると、
男女同権をとんでもない方向で勘違いして、
先進的な女を気取っているのではと皮肉な目で眺めてしまう。

面白おかしく編集されたマスコミ情報に振り回されないように、
本来の男女平等とは何かを、
自分の頭を使って咀嚼することが大切だと考えています。

いつだったか、NHKの9時のニュース担当の女性アナウンサーが
とっさの際に「ヤバイ」と口走ったので我が耳をうたがった。
知性と教養を基準に採用されると聞き及んでいる職業の女性が、
この有り様では言葉を失ってしまう。

「ヤバイ」なんて、ヤクザが使う言葉だと聞いて育ちましたよ。

わたしは女性が平気で「ヤバイ」などと使うような
<男女同権ぶり>には異を唱えたい。


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