第43回 悪知恵だけは大人以上

最近は子どもたちの学力低下が問題になり、
今ではゆとり教育を見直すという状況下にありますが、
その子どもたちの悪知恵の方はますます磨きがかかっているようです。

子どもたちは時によっては大人以上の知恵を発揮する。
それを真っ当に使えばひょっとして偉人になれるチャンスもあるというのに、
せっかくの知恵を悪い方にしか使えないというのが悲しい。

ある日の読売に高校生らによる「振り込め詐欺」の
驚くべき内容の報道があった。

東京都立高校生ふたりを含む少年5人が、
振り込め詐欺で騙した金額の総額は2500万円。

香川県内の無職女性(83)の息子になりすまし
「借金ができたが都合がつかない。お金を宅配便で送って」と電話をし、
現金50万円を宅配させ、この手口で16人から総額1480万円だまし取った。
電話帳で高齢者らしい名前を探し出して電話をかけたとか。

この記事で驚いたのは、これまでになかった現金を宅配させるという手口。
宅配は頼みさえすればたとえ現金であっても配達してくれるが、
なかなか思いつかないものである。
さらに宅配先が私書箱であるから、さらに驚く。

そんな知恵を子どもたちはどこから得たのか。
それともこれらの手口は普通におもいつくものであり、
わたしが鈍すぎるのか?

これでは「オレオレ詐欺」が手口と共に「振り込め詐欺」と改称したように、
またしても「宅配詐欺」と改称しなければならないの?

振り込め詐欺で詐欺犯が恐れるのは、振込み口座からお金を引き出すときである。
せっかく振り込ませたお金は引き出さないと意味がない。
しかしタイミングが悪いと詐欺がバレる恐れがある。
人を雇って引き出すにしてもどこかで接点があればアシがつきやすい。
 
しかし宅配、私書箱という手口はなかなか巧妙である。
宅配便業者は配達の箱の中までチエックするわけではない。
その配達先も私書箱であれば、預金口座から引き出すよりは安全である。

百戦錬磨の詐欺犯が思いつかなかった手口を、
なぜ少年たちが思いついたのか。
或いはすでにこの手口は使われていて、それを模倣したものなのか。
いずれにしても、この手口を報道で知ったのは今回がはじめてだった。
 
詐欺を働いた少年たちの豪遊振りにも呆れる。
こちらも大人顔負け。

外車を購入しホテルで豪遊したというが、その内容がすごい。
背広を新調し、一人前6万円もする高級フランス料理、
同じく一人前4万円の焼肉料理を注文するなどして派手に使った。

主犯格の少年は
「田舎のお年よりが金を溜め込んで使わないからバルブがはじけた。
 騙し取って使えば景気は良くなる」と供述したらしいけれど、
こちらは悪知恵にくらべたら、いかにもオソマツな内容の言い訳。
「盗人猛々しい」とはこのことでしょう。

いずれにしても背広を新調したとはいえ、まだ少年らしさが抜けきらなくて、
その場の雰囲気に合わない客が、或いはあまりにも若すぎる異質の感じの客が、
一人前6万円もの高級料理を注文した時、ホテルの従業員はどう感じたのか。

ホテルマンは長年の経験から、
客層を一目で見分ける感覚を身につけていると聞いている。
たとえどんなに着飾って高価な宝飾類を身にまとっていても、
その人物のバックデーターを見分けることができるらしいというではないの。

また別の記事では、広島の県立高校1年生ら5人が1億円入りの金庫を盗み、
2千万円ずつ山分けし豪遊した記事が載っていた。
豪遊の内容は、高級ブランド品や貴金属買い、東京や大阪にも旅行した。
飲食やパチンコ、バイクの免許証取得に使った等々。

5月に盗んで山分けした2千万円のお金は、
9月末にはなくなっていたと言うから恐れ入ります。

騙したお金でブランド品や宝飾品、遊興飲食というのも、
今どきの大人社会をそのまま反映しているのではないの。
子どもたちはブランド品の価値や宝飾品の価値は知らなくても、
世間に溢れているその手の情報に憧れを募らせ、やみくもに買い漁ったの?

少年たちが逮捕されたキッカケは、広島市内の繁華街の飲食店から
「金遣いの洗い少年がいる」との情報がもたらされた結果だと言う。

大人たちが子どもに関心を持つことが、
いかに大切かがよくわかる事件でありました。



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