第34回 役所も荒稼ぎ? 世相のスピードは、今やジェット機並み。 衝撃的なさまざまな出来事が矢継ぎ早に襲ってくるため、 ひとつの出来事にこだわっている暇もないと言うべきでしょうか。 それとも、人や世間とは、それほどに飽きやすい側面を持つものなの? あれほど世間を騒がせた田中真紀子氏は、 今やテレビ番組の<あの人は今?>に登場しそうな過去の人になっている。 それゆえ<住基ネット>と言われたら、 「たしか、そんな騒ぎもあったような・・・」と答えてしまいそうな 昨今の状況ではあるけれど。 ところが、最近それを思い出させるような見出しが目に飛び込んで来て愕然とした。 ある日の読売の地域版に、○市の情報があった。 「住民基本台帳の閲覧手数料、実質的に値上げ」 ○市は訪問販売業者やダイレクトメール業者から住民情報を守るため、 11月から住民基本台帳の閲覧手数料を改定することに決めた。 (住民基本台帳の閲覧簿とは、住民票から抜き出した <住所、氏名、年齢、性別>について正当な理由があれば、 住民基本台帳法に基づき誰でも閲覧できるというもの) そんな馬鹿な! 無知とは恐ろしいものだとつくづく思った。 わたしは不動産関連の閲覧については知っていたけれど、 まさか自分の個人情報までが誰にでも閲覧できる状態にあるとは まったく知らなかった。 どれだけの人がこの実態を知り得ているのでしょう。 不動産関連にしても、自分の所有物について勝手に閲覧されてしまうのは あまり気分が良いとは言えない。 しかし売買関連では所有者の確認や抵当権設定の有無の確認が不可欠となるので、 やむを得ない事情がある。 住基ネット導入が騒ぎとなり国民的な議論を巻き起こしたのは、 ネットという危ういシステムに大切な個人情報をゆだねる怖さがあったからではなかったか。 それはひとえに、個人情報は漏れてはならないとの大前提があるからと 言えるものではないの。 しかし、役所の窓口で手数料なる名目のお金さえ払えば、 他人の個人情報が簡単に得られるシステムになっていたのだ。 このような矛盾に満ちた行為が住基ネット導入のずっと以前から 当たり前に行われていたとは。 どうして! なぜ! 理由を知りたい。 この矛盾に満ちた法律がなぜできたのか? その理由や根拠を知ったところで納得はできないでしょう。 特別の場合を除き、 普通の人が他人の名前、住所、年齢、性別などを閲覧する必要性があるの? これらを知りたいと望むのは、やはり訪問販売業者やダイレクトメール業者などの、 利益やあるいは何か企みを持つ特殊な場合しか考えられない。 その証拠に○市の昨年の閲覧データーは延べ453人で、 そのうちの420人が業者による閲覧だった。 なぜ役所が業者に手を貸さなければならないの! 市役所は閲覧料値上げの理由を 「すぐに閲覧件数の減少につながるとは考えにくいが、 住民情報を守るという意味では、打つべき手を打たなければならない。 ある程度の抑止力にはなるはず」 この回答は、大いなる矛盾に満ちている。 <住民の個人情報が業者に漏れている状態を認めた>上で、 その対策に苦慮し手数料の値上げという手段で<抑止力>を働かせるというもの。 さらに手数料の値上げが<住民情報を護る>が理由ならば、 売っている情報を護るとは馬鹿げている。 保護したければ売らないことに尽きる。 国が法律で定めている事項を市役所が勝手に変えるわけにはいかないから、 せめてものつもりだとしたら、住民としてはますます納得がいかない。 金銭をもらって個人情報を提供する。 これを民間がやれば犯罪になる。 法律で禁じられているからだ。 しかし役所が同じことをしても犯罪にはならない。 法律で決められているからだ。 納得ができるものですか! これをネット姫風に表現するならば <データーを盗み出して業者に売りつける犯罪行為を、 法律の下に役所が堂々と行っている>と過激になる。 閲覧料を値上げしたから「ハイ、では諦めます」と、 ピラニアみたいな業者があっさり引き下がると思っているの? それを考えると<やはり役所が業者に手を貸している>といわざるを得ないのでは。 役所も荒稼ぎが許されるの? 数日前の新聞記事は衝撃的な事件を報じていた。 名古屋市内の区役所で住民基本台帳を閲覧して、 小中学生のいる母子家庭を探し出し、 母親の留守中に少女を強姦した容疑の31歳の男が、 他にも十数件の余罪を自供した。 他人の個人情報を見たがる動機には、やはりロクなものはない。 (注) このコラムは2002年の10月の時点で書いたものですが、 最近の読売の夕刊のトップ記事に大きく、 <あなたの知らぬ間に閲覧野放し住民基本台帳>の見出しがあった。 ここに来てようやくおかしなことに気がついて騒ぎ始めたようです。 これまでは自分の個人データーが役所で勝手に閲覧される制度が 広く一般に知られていなかったことが原因だったのではと思われます。 事実、この夕刊のトップ記事が掲載される数日前に、読者欄に投稿がありました。 投稿内容は娘宛てにひな祭り人形のダイレクトメールが届いたが 閲覧で漏れたのではないかという疑問だった。 その後、先の投稿を受けた形のさらなる投稿があり、 その内容は役所で個人情報を閲覧できると知らなかったがそれはおかしいと 指摘したものです。 それからすぐに夕刊のトップに上記のタイトルの記事が掲載されました。 これらの経緯から、一般人が寄せた疑問に新聞社が反応したと思っています。 大新聞の記事となったからには多くの人がこの事実を知ることになり、 まさに国民的な論議を巻き起こし、法の不備が是正されることを期待しています。 HOME TOP NEXT |