おもしろいコラム マジックのような数字


第30回 マジックのような数字!

「作ったものをそっくり捨てている」とお聞きになって、
どのようなことを想像されますか?

読売に「2003地球環境米米フォーラムin北長門」の様子が掲載されていた。
その中の「とんぼ田んぼシンポジュウム」は、稲作を通じて
駐日外交官らと農業地域の住民が交流し理解しあう一連の催しだそうだ。

今回のテーマは「食の安全・安心を目指して」

作家の石川英輔氏による基調講演の概略を掲載していたが、
とても興味深いものだった。

日本の食糧自給率が40%と聞いても、
とっくの昔にひっくり返るほど驚いたので、
今さらになって講演内容の数字に驚くことはなかったけれど、
以前に感じた「日本の食料事情の将来はどうなるのだろう」と、
危惧した恐怖の方は、今でも継続中である。

高月紘・京大教授の調査では35.77%が台所の食べ残しで、
日本中で年間約720万トンもの食物が捨てられているとのこと。
文部科学省の試算では、残飯量は金額にして年間に約11兆1千臆円!
くどいようですが、11兆1千億なのです。

これだけのお金をポンと捨てていると思えばその凄さがわかるはずです。
あまりに巨額すぎて、かえって実感が伴わないのが難点ですが。

農水産省の試算では、農水産物の年間生産量は12兆4千億円であるから、
つまり国産の食物をそっくりそのまま捨てているのと同じになるとか。

1兆円以上も計算が合わないじゃぁないか!
この際、そんな細かいことは言いっこなし。

これくらい桁外れの額になると、もう1兆円くらいはどっちでもよくなってしまう。
とにかく、残飯として捨てられる量の凄さをわかってもらうのが重要なのだから。

基調講演ではその解決策として
「敗戦直後のように米粒ひとつでもさらって食べたら、
 逆に国産の分がすっかり残る計算になる。
 そうすれば日本の食糧事情は安心というにもなると思うが」
と結んでいた。

すっごく簡単じゃん。

しかし、物事は計算どおりにいかないのが世の常であり、人生のようです。
念を押さなくても、皆さまはよくご存知だと思いますが。

わたしはご飯の食べ残しをしないという当たり前のことをしているけれど、
今の子供からすれば、「すごい」と思われているかもしれない。

亡き母や義母の食べ物を大切にする姿勢は、
わたしのそれをはるかに上回る「とてもすごい人たち」だったけれど、
当時はそれがごく当たり前の姿勢であり、母や義母は特別な人ではなかった。

時の流れと共にこれらが変化することになると、
今の子供たちが親になるころは「食べ残しが当たり前」になっているのだろうか。
それとも、どこかで軌道修正が行われて、
昔のように食べ物を大切にする習慣が復活するのか。

やはり、何事も子供に対する親の教育次第へと帰結するようです。


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