おもしろいコラム  疑い深い性格(こんな女に誰がした2) 


第28回  こんな女に誰がした その1(疑い深い性格)

わたしは常々、少しでも安全な食品を確保したいと願ってやまない。
それゆえ体制に信頼がおける生協の会員になっているけれど、
安全な食品はその分だけ価格に反映される。

つまり、高い。

しかしせっかく高い代金を払っても、
その恩恵をきちんと享受できなければ意味がないので、
商品の表示にはかなり敏感にならざるを得ない。

知人に聞いた話によると、隣家は生協との契約栽培農家でも、
農薬散布を頻繁に行い家族の食べる分は別に栽培しているとのこと。
隣人は知人に「消毒の回数なんていくらでも誤魔化せる」と、
うそぶいたそうだ。

それゆえ、近ごろ騒がれている食品不当表示については
(やっぱり!)という思いが強かった。

もちろん真面目な生産者や企業にはえらく迷惑な話かもしれませんが、
現実には監視している体制でさえ不正を行おうとすればできるのだから、
結局は、生産者や企業を信頼するしかないという原点に立ち戻る。

この先、消費者はなにをどう信じたら良いの。

かなり前にも、食品の不当表示がニュースになったことがある。
その時は成分ではなく分量表示だった。

煮豆や佃煮や様々な食品を抜きうちでチエックしたら、
検査した食品の全種に分量不足が見られたというものである。

最近も、精肉偽装疑惑の不当表示を取材中のテレビ局が、
ついでに分量のチエックを行ったら300グラム表示が280グラムしかなかった。

結局、分量不正は一向に解消されていなかったのだ。

わたしは以前から、鮮魚と精肉には特に疑惑を持っていた。
魚の切り身や生肉を重ねたパックの封を開けると、
表面は鮮やかな色をしているのに重なった内側の部分の色合いが
茶色にくすんでいることがある。
切り身を重ねた後に発色剤をスプレーしたのではないか?
或は古い方を内に隠して新しいものを表面に偽装したものか? 
そんな疑念が湧いた。

これらの疑念は、以前テレビの暴露ドキュメントで、
スーパーの店員が証言していた手口なのである。

鮮魚や精肉は、空気に触れていると変色していくから、
色の変化の度合いは表面が先にくすみ、
重なっていた部分は空気中に触れる度合いが少ない分だけ、
表面より色が鮮やかでなければならないはず。

買ってきた精肉や魚の切り身のパックを冷蔵庫に入れて数日間ほったらかし、
それからおもむろにパックを開けてご覧あそばしませ。
真っ当なお肉なら表面は茶色に変色していても、
内側の重なり合った部分はまだ鮮やかな色合いを保っているはず。
これが由緒正しい変色の順序なのです。

表面は鮮やかなのに、内側が変色しているのは不純(不順?)なのです。

なぜか、精肉や切り身にはこの不順な変色現象がときおりみられる。
脂肪の少ない赤身肉を選んで買ったのにパックを開けたら、
赤身の下から白い脂身がたっぷり現れることがあり、
それで腹を立てたりするけれど、
こちらなどは先に比べたらまだ可愛いらしい偽装工作である。

1年ほど前に、安売りで有名なスーパーが家の近くに開店した。
生協で精肉の変色逆転現象を経験していたわたしは、
どうせ疑惑ならすこしでも安い方がマシと方針を転換させ、
安いほうのスーパーへ足を運ぶようになった。
そこで精肉を買い続けているけれど、幸い変色の逆転現象は経験していない。
それでも知識を得たいがために、売り場の店員さんをとっつかまえた。

「精肉にどうしてそのような変色逆転現象が見られるのかしら?」
「いえ、この売り場に限ってはそのようなことはありません。
 わたしがすぐ裏の調理場で解体したのを、その場で並べていますから」

30歳代らしいさわやかな感じの男性はきっぱりと言った。
そのスーパーに限り、変色疑惑については大いに安心した。

しかし、昨今のように持ち込まれた肉の産地が偽られていたとしたら、
せっかくの店員さんの誠意も努力も無駄になってしまう。
彼は運びこまれた肉を解体するだけなのだから。

いったん疑いを持つと、それはアメーバーのように拡大していく。

<この食品は遺伝子組み換えをしていません>

それが正しい表示であると、消費者はどのようにして知り得るの?

「あなた、わかってないわね。だから役所がちゃんとチエック体制を敷いているのよ」
「わかってないのはそっち。その役所が一番信用できないから困っているんじゃない」

言い合いをしているときではありませんが・・・


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