第27回 モヤシのダイエット 毎日配達される新聞のチラシの量は、相当なものである。 その中で、毎日挿入の皆勤賞ともいうべき存在は、 ダイエット関連のチラシであると思う。 それも、女性向けの美容関連のダイエットが多い。 不思議なのは、ダイエットメニューの異常な氾濫ぶりである。 町を歩いても目を見張るような肥満の人に出会うことは滅多にないというのに。 テレビの街頭インタビューで「太っているからもっと痩せたい」と、 答える若い女性のすらりとした体は、わたしの目にはモヤシ状態としか映らない。 中年女性にしても、肥満と表現するには当たらない、 すこしばかりふくよかな程度でも、当人の悩みは深刻なようですが、 日本人女性はどうして自分のことを太っていると思い込みたがるのでしょう。 その性癖をうまく利用した結果が、 ありとあらゆるダイエット関連ビジネスの流行なのか。 あるいはダイエット関連の陰謀で、 日本女性を<痩せたい願望>に洗脳してしまったのか? 女性向けのさまざまな媒体に、ダイエット情報は不可欠になっている。 それゆえ成分や出所はおろか、 効能さえも定かでないダイエット商品も登場することになり、 命と引き換えにもなりかねない昨今の世相である。 わたしは、外国旅行の航空機の中で、 これぞ肥満と形容すべき女性に出会ったことがある。 彼女は外国人の客室乗務員と称される職業の人であるが、 彼女の肥満度はその印象では横綱クラスだった。 決してオーバーな表現ではないと思っています。 「冗談だろう・・・」 彼女と対面した夫は目の前の光景が信じられなくて、 口を閉めることを忘れて、しばし開けっ放しの放心状態だった。 「なぜ彼女が?」 わたしも、しばらくは自問自答させられた。 おそらく他の乗客にしても思いは同じであったにちがいない。 それほどインパクトのある肥満ぶりだった。 彼女の体の幅は、通路の幅と同等クラスだったせいか、 正面を向いて歩くのが難儀そうであり、 彼女の肉塊は通路側の乗客の腕を押しのけて通りすぎる。 通路側の席のわたしは、彼女の姿を認めただけで体を引っ込める癖がついた。 現在はともかく、以前の日本の客室乗務員の採用基準は、 美が大切な要件だったようですが、 ふくよかな程度はもちろん関取クラスの乗務員の採用などは、 とんでもない非常識であったにちがいないから、 彼女のような肥満女性を雇うのは、能力評価主義の外国航空会社ならではと、 感心したり呆れたりもした。 その後、どこかの外国航空会社が 「肥満の客室乗務員は解雇する」との方針を発表すると、 「これは肥満に対する差別だ」と訴訟沙汰になったニュースを覚えている。 客室乗務員の乗務の第一目的は、食事やサービスの提供ではなく 「いざというときの乗客の安全誘導」だそうである。 それゆえ、客室乗務員が通路をふさいで乗客の脱出を妨げるような状態では、 やはり職種に合わないと解雇されても仕方がないと思った記憶がある。 わたしの肥満の認識とは、前述の彼女に近いような状態と言える。 これは一般の日本人の肥満認識とはかなりかけはなれた特別のものなの? しかし、日本の女性たちは正真正銘の肥満を見る機会を得ることにより、 目の方を肥満させる努力が必要かもしれない。 カリフォルニアあたりでは日本人の二人前はあると思われる肥満ぶりを、 そう珍しいこともなく見られるのだから。 その肥えた目で、昨今の日本人女性のダイエット願望を分析してみると、 まさにモヤシがダイエットを望んでいるような状態であると、 価値観が変わるかもしれません。 目を肥やす、こちらは文句なくお薦めです。 HOME TOP NEXT |