おもしろいコラム コンセプトの達人


第17回  コンセプトの達人

お散歩の途中で、ときどき駅前の〇〇・バーガーに寄る。
数紙の新聞が用意されているので、
家で購読していない新聞を読みたいときに利用している。

大抵は、コーヒーとデザート類を注文しているが、
お腹が空たときは、それほど好物ではないハンバーガーを注文することもある。

この手のお店が取り入れているスタイルのひとつに、
トレイにペーパーマットを敷き、それにトピックスを印刷している。
ちょっとした読み物としてはなかなか面白い。

さて、〇〇・バーガーのマットには何が書いてあったか?

オーストラリアの広大な大地で、化学肥料に侵されていない自然の飼料を使い、
のびのびと育った牛の肉を使っていると強調していた。
そのコンセプトが「安全!安心!」であるのは明白。

消費者の健康志向をくすぐる心憎い作戦であり、
健康志向オタクのわたしにとってはうれしい限りです。

しかし、それを読んだとたんに、わたしは憤然とした。
憤然として席を立つべきだったのに、立てなかった。
コーヒーもハンバーガーもまだ半分も残しているし、
なによりも読みたい新聞をまだ読み終えていなかった。

わたしは健康志向の観点から、タバコの煙を毒ガスのように嫌っている人種ですが、
駅前の小さな〇〇・バーガーは、
いつでもタバコの煙が白いスクリーンのようにはりめぐらされていた。

それでも新聞を読みたさに、息を詰めながら店に居座り続けるから、
自分のコンセプトのいい加減さに後ろめたさを感じている。

しかし、牛肉や野菜の安全性を誇示している一方で、
有害な煙を平気でためこんでいる店の精神が許せない。
そう思いつつ、新聞につられて足を運ぶ我が身はなおさら許せない。
コンセプトの達人ならば、二度とこの店には立ち寄らないはずである。

ヒマジンの趣味と好奇心の観点から、
店を経営する企業のコンセプトを検証することにした。
さっそく、ペーパーマットに印刷されていたホームページにアクセスして、
「健康で安全な牛肉を食べさせた後で、毒ガスをたっぷり吸わせるとは何事!
 コンセプトが本物ならば店を禁煙にしたらいかが」と忠告した。

きっと、クドクドと回答か釈明があるだろうと、
好奇心のカタマリは期待して待っていたが、返事はなかった。

この手のイチャモンには慣れているのか、
それとも変わり者のたわごとと無視されたのか。

売上向上のために健康志向の消費者のニーズをうかがうその一方で、
喫煙者のお客も捨てきれないという企業の偽コンセプト。

こうしたニセモノは、世の中には他にもいっぱいありますね。

(最近、久しぶりに立ち寄ると、ナント、喫煙席が設けてあった。
 それも、他のファミレスのように席だけを喫煙、禁煙に分けるだけの
 真っ赤なインチキではなく、透明なガラスで天井まで囲った、
 完璧なガス室になっていた!)


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