第99回  今どきの子どもたち

子どもたちにとっては楽しみな夏休みとなり、
昔ながらのキャンプファイヤーをする子どももいると思うが、
読売がシリーズで特集していたシリーズ教育の「今どきの子ども」を思い出す。

その内容は衝撃的だった。

自然教室を開いている校長は、子どもの思わぬ行動に驚いた。
キャンプでカレー作りを終えた直後に小学校低学年の男児が、
包丁の刃にすーっと自らの手を滑らせたが、
彼は滲んだ血を見てはっと我に返り涙ぐんだ。
ジャガイモやニンジンを実際に切ったはずなのに「どうして?」と聞くと、
男児は「手も切れるとは思わなかった」と答えたと言う。
(なんて言ったらいいのか・・・)

まだ小学校低学年だから無理もない、などと言っていられない事態である。
しかしながら、このような光景は近年は珍しくないと言う。
ガス調理台の青い炎しか見たことがない子が、
飯ごう炊飯の赤い炎に手を突っ込もうとしたり、
炊き立ての飯ごうを素手で掴んだり・・・

つまり、青い炎は熱いと経験上から知っているが、
経験のない赤い炎は熱いと思わなかったようである。

にわかには信じがたい上記の事例も、
幼いころから多くの時間をテレビ観賞やゲーム機に興じ、
行き先がコンビニの環境では、
今どきの子どもたちの状況もそれなりに理解できるのですが。

「母親が切れた野菜ばかり買ってくるため、自宅には包丁がない」という子もいた。
これらを踏まえると、
子どもにとってはより多くの経験が必要なことがわかります。

自然観察会の自然体験でセミやカエルを触らせようとすると
「ばい菌だらけだから汚い」と、逃げ回る子も多くなった。
「親がそういうそぶりを見せるから、それを子どもが真似る。
今の若い親は自然に接して育っていないから、子どもも本当の自然が理解できない」
と観察会のリーダーは述べている。

以前、文部科学省が小中学生約1万1千人を対象に、
体験活動に関するアンケートを実施したことがある。

「太陽が昇る(沈む)ところを見たことがある」
「チョウやトンボを捕まえたことがある」などの自然体験や
「小さい子を背負ったり遊んであげたりしたことがある」
「ナイフや包丁で果物の皮をむいたり、野菜を切ったりしたことがある」等の、
生活体験が豊富な子ほど、
「友達が悪いことをしたらやめさせる」
「バスや電車で席を譲る」といった道徳観や正義感が強いことがわかった。

日本中を震撼させた邪宗がらみの事件も、勉学だけに没頭した結果、
高学歴を得ることはできたが、一方、自然体験や生活体験が希薄になり、
道徳観や正義感も希薄のまま邪宗にたぶらかされた結果ではと考えると、
高学歴者の不可解な行動の謎がわかるような気がする。

しかし、今どきの子どもたちの体験頻度はかなり貧弱で、
<キャンプ>については男子40%、女子の45%が「ほとんど経験がない」という。
<高山への登山>も男子55%、女子の60%に経験がないようである。

ゲーム機の大手メーカー、ソニー・コンピューター・エンターテイメントは、
かつてゲームソフト「ぼくのなつやすみ」を販売したが、
好評だったのでその続編も作り、それぞれ40万本にのぼる大ヒットとなった。
当初の購買層はなつかしさに引かれた30代、40代と予想していたが、
実際に購入した人の4割は小学生から高校生だった。
マーケティング担当者はゲームをやって<いいな>と思ったら、
どんどん自然の中へ出て行ってほしい。
それが製作者の願いでもありますと述べている。

同じゲームソフトでも、目を覆うような過激や残酷なものより、
この手の内容のソフトが大ヒットするならば喜ばしいことだが、
果たして製作者の思惑通りに、子どもたちが実際に自然の中に
出て行ってくれるだろうか?
それともゲームだけで満足して終わってしまうのだろうか?

いずれにしても、包丁で自分の手が切れることがわからなかったり、
火であぶっていたものが熱いとはわからずに素手で掴んでしまう子どもたちが
親になったら、彼らの子どもたちの将来はどうなるのだろう。

昔の人は経験の大切さを「百聞は一見にしかず」と諺で残していますが、
まったくもって名言だと思っています。

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