第100回  ハイ、それまでよ

「トップレス禁止は女性差別」と、
米カリフォルニア州で女性弁護士らが法改正に乗り出したと、
ある日の読売にこのような記事が掲載された。

「州法で女性がトップレスで日光浴するのを禁じるのは、男女不平等だ」

同州法は公共の場所で裸体をさらすことを禁じているが、
特に女性に関しては胸部を露出するのは公然ワイセツに当たるとして罰則規定がある。
それでも1998年には、母親が子どもに公共の場所で母乳を与えることは
合法化されている。

つまり、同じ人物が公共の場で胸部をさらしても目的次第で、
合法、違法ということになる。
法改正運動を進めるリアナ・ジョンソン弁護士によると、
女性のトップレス禁止は同州の法律に残る最後の男女差別とのこと。

すごいなぁ、と思った。

男性が胸を出しても、女性は胸を隠すのは当たり前だと思っていたが、
この当たり前のことが<最後の差別>というからには、
それ以前のさまざまな男女の性差の違いまでも撤廃したことになるのだから。

今や米国には男と女の垣根はまったくないだろうと思いたいが、
そこは人間世界の悩ましさ、あれこれ言っても所詮は男と女の世界。
口で言うほど簡単にはいかないようである。

米国の女優ジェーン・フォンダさんをご存知だろうか。
名優といわれたヘンリー・フォオンダさんの娘で、
俳優のピーター・フォンダさんの姉でもある。

彼女は反戦の闘士としても知られ、政治活動にのめりこみ、
ニクソンのブラックリストに名を連ねるほどであった。
ビジネスの世界では1981年にワークアウト・プログラムで、
自身の素晴らしい体型を維持しているプログラムをビデオにして、
フィットネスブームの火付け役となり自立した女性として知られている。

その彼女がCBSテレビのインタビューで半生を語った様子が、
いつだったか読売に掲載されていた。
彼女は、フランス人映画監督のロジェ・バディム氏、反戦活動家のトム・ヘイドン氏、
CNNテレビの創業者テッド・ターナー氏との3回の結婚について赤裸々に語っている。

「私は一緒に暮らす男性に気に入られたい病気にかかっていた。
私は勇敢な人間で北ベトナムにも行けたし、政府にも挑むことができた。
でも一緒に暮らす男性には盾を突けなかった」

バディム氏が撮ったSFコメディではエロチックな役を演じたが
「ノーと言えば捨てられると感じた」と打ち明けている。
ベトナム反戦活動のリーダー、トム・ヘイドン氏と再婚後は、
掘っ立て小屋と称する粗末な家で洗濯機もない生活を送ったが
「正直言って辛かった」と述べている。

率直に自分の半生を語るその彼女こそが、
真に自立した女性であると、わたしは感じた。

ターナー氏と離婚後は、
私財を投じて10代の少女が妊娠を避けるためのプログラムを、
アトランタで運営しているという。

もうかなり前のことになるが、女性のための雑誌<MS>の創刊者であり、
世界のフェミニズム運動の象徴的な存在で独身主義だった、
米国人編集者グロリア・スタイネムさん(当時66歳)が
結婚をした記事が報じられ、世界を驚かせたことがある。

彼女は長い間、著書などを通じて、
「結婚は男女の関係を破壊する制度である」と批判し、
不平等な夫婦関係からの女性の解放を訴えていた。

彼女の転向の理由は不明だが、結婚後の心境については、
「幸せで驚いています。いつの日か今回のことについて書いてみたい」と、
臆面もなく述べている。

彼女が自説を貫き独身だった影響で、
教養のある女性の間では「結婚しないことがファッション」と、
伝説的な存在だったというから人騒がせにもほどがある。

この猛者にしてこの有様です。

日本の「男なんて何さ!」と威勢の良いかけ声の自称自立のおねーさま方なら
なおさらのこと、女も男もありません。
好きになったら「ハイ、それまでよ」

それがわかるまではがんばってください。

えっ、もうわかっている?
実はあまり大きな声では言えないけれど、
生涯の素敵な伴侶を探し続けて焦っている?

あら、そう?
メディアに煽られて、掛け声だけだったわけね。

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