コラム 第248回 はじめてのおつかい

ワタクシの世界は本当に狭いものです。

なにか特別なことがなければ散歩かスーパー、それっきりです。
たまに行く旅行を除くと、一年中家とスーパーとお散歩、それっきりです。
不平を述べているわけではありません。
根が出不精でボーッとしているのが好きなので、この環境でも充分です。

お散歩はお気に入りの公園が定番のコースになっていますが、
同じ行動ばかりを繰り返していると早くボケると聞き及んでいますので
本日はコースを駅前の飲食店街の路地へと変え、急に世俗的になりました。

このコースは勤め人時代の通勤路でした。
片道2時間の遠距離通勤でヨレヨレになって電車を下り通りかかると
そこかしこから「ア、ソレッ、ソレッ」と、飲んだくれの声が耳を汚します。

こちらはこれから食事の仕度だというのに!

そのなつかしい場所を、お天道様がランランと輝いているお散歩時間に通りかかると
路地の様相は夜とは一変。
化粧美人が化粧を引き剥がした後の、あの面相のような無残を晒しています。

しかし、飲んだくれのカラオケだけは健在でした。

「月もオイラも、もらい泣きぃ〜」

どうしてお天道様の下でダミ声の「月のもらい泣きぃ〜」が流れているの?
月の出番だってまだ早すぎるというのに。

「だから、オイラもさ」・・・ついにセリフの部分に突入。

その間ずっと聞いていたのかって?

ワタクシ、好奇心は強いほうですが物好き度はそれほど高くはないつもりです。
お店の前にちょっと変った置物があったので、ボォーと眺めていただけのこと。

タヌキやらクマなら珍しくはありませんが、ワシだかタカですもの。
それも呆れるくらいバカデッカイものだから、ついでに感心しちゃったりして。

そんなことでいちいち感激するな?
昼間のカラオケだって珍しくもなんともない?

アラ〜、そうでしたの?

出不精のおさんどんが一歩世間にでると、まるではじめてのおつかいのときみたい。

チョー新鮮なの!

(次回は辛口に戻ります)


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