辛口コラム 第236回 人間は美白、食品は漂白がトレンド?

風呂からあがった夫が青い顔をして二階に駆けあがってきた。

「漂白剤をのんじゃった」
「そんな馬鹿な、なぜ?」

湯呑茶碗のシブを取ろうと漂白剤を入れて流し台の上に置いた湯呑の水を、
風呂上がりの粗忽者の夫が勘違いして、一気にがぶがぶっと飲んでしまったらしい。
挙句の果てに「あんなところに置くからだ」と八つ当たりの責任転嫁。

夫はかなり動転していた。
「水くらいちゃんと自分で水道の蛇口をあけて飲むものでしょ」と応酬したわたしも
かなり動転していた。

すでに深夜に近いこともあり、医者へ行くこともためらわれ、ネットで検索。
牛乳をたくさん飲んで薄めるとよいとあった。
あいにく牛乳が切れていたので、近くのコンビニへ走った記憶がありますが、
心配で気が気ではなかった。

ちなみにネットの検索では、夫と同じ状況の誤飲の例がたくさんあり驚きました。
湯呑に漂白剤を入れておいたのはおばあちゃんで、
飲んだのは孫というように対象はそれぞれ違ってはいたけれど。

それ以来、我が家では漂白剤はトラウマになりました。

今年の春、我が家に遊びに来た義妹の手土産は、地元の銘菓の栗むし羊かん。
大きな栗がごろごろ入っていてとてもおいしかった。
食べ終わってから何気なく竹皮の裏に貼り付けてある印刷の文字を見て仰天。
添加物の中に「漂白剤」とあったものだから、途端に食べたものを吐き出したくなった。

亜硫酸ナトリウム(亜硫酸Na、亜硫酸塩、亜硫酸ソーダ)、二酸化硫黄は、
水によく溶け、強力な還元作用により漂白する。
酸化防止、変色防止、保存、防かびなどの効果があるようです。

食品添加物の中に亜硫酸ナトリウムの表示を見てもピンときませんが、
栗むし羊かんのように<漂白剤>とあると、
即座に洗濯物や食器類等の渋抜きを思い出し、ギョッとなります。

新聞で<ポケットに一冊>という見出しで
安部司さんの「何を食べたらいいの?」を紹介していました。以下はその要約。

<手軽で、おいしそうで、長持ちする食品。これは消費者の味方のように思えるが、
それが添加物を増やすことをご存知でしたか?>の、取材者の書き出しで始まる。

<安い霜降り肉は、赤肉に乳化した牛の脂を注射器で打ったもの。三拍子そろった加工食品の多くは添加物まみれという。一般に使われている添加物は、使用が許されているものばかりだから、ただちに健康に影響はないらしいが本書でその作り方を紹介されるとげんなりする。たとえば、ある漬物の場合、塩漬けで保管され黒ずんだ茶色になった野菜を塩抜きした後、漂白剤でまっ白にし、タール系の色素(合成着色料)で、たくあんの色、山菜の色などに染め、うま味調味料、酸味料、甘味料などで味付けする。
安さ、便利さ、見た目のよさを求めたいとは思ったが、漂白剤をもとめたわけではない、と思う人もいるだろう。食の裏側を覗くと、人間の欲望の果てまで見えてくる>
と結んでいます。

わたしは野沢菜のつけものが大好きですが、
子どものころ食べていたものはまさに<黒ずんだ茶色になった野菜>でした。
今、スーパーに並んでいる野沢菜は目に鮮やかな緑色です。
以前、購入時の添加物チエックの際には、不安を感じるものはありませんでした。
それでも、きれいすぎる色合いに疑問が残り、いつしか買わなくなりました。
スーパーでも茶色の野沢漬を見たこともありますが、
今は自分で作る漬物で間に合わせています。

一般に使われている添加物は使用が許可されているものばかりだからと
新聞にはありましたが、
食品添加物の使用許可が他国より日本はかなり緩いと感じている身には、
そもそもお上の太鼓判があまり信用できないので厄介です。

健康にただちに問題はないとあっても、
簡単で便利な添加物まみれの食品を長年取り続けるとどうなるのでしょう。
癌(がん)発病が他の先進国に比べて日本は多いと聞いています。
昔は聞かなかったような病名も数々あります。

ひょっとしたらと気になっています。

(栗むし羊かんのお店は「漂白剤」なんてわかりやすい添加物名をどうして使ったのかしら?)


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