第228回  フィットネスで全裸のお侍さん歩き

水泳を習うために通ったフィットネスで
(例により3ケ月しか持たなかった・・・価格のサービス期間中だけ)
女子ロッカールームというものを初めて体験したけれど、
女性の生態をウオッチするのには最適な場所であると思う。

ロッカールームには、お風呂やサウナルーム、シャワールームがあるから、
フィットネスの女子ロッカールームをわかりやすく表現すると

<女性が裸でウロウロする空間>

ということになる。

初めてロッカールームを使ったとき、
ロッカーの戸を「バーン」と力任せに閉めたりする人がいて
着替えをしていた小心者のわたしはその音に驚いて、
あっと叫んで胸を抱えて座りこんだ。
とっさに、九州のフィットネスで起きた発砲事件が脳裏に浮かんだから。

夫は力が有り余っているせいか、引き戸を力任せに引くから、
勢い余ってその戸がまた半分ほど戻ってくる。

「親の仇でもないのに・・・」

わたしはいつもあきれているけれど、
女子ロッカールームにはどうやらその「親の仇」がいるらしい。

開けたロッカーの中から着替えの洋服を力任せに引きずり出して
そのままバッと床の上にバラまく人もいる。
ロッカーが縦に細く狭いので、
中からものを取り出すのが厄介だからたしかに面倒ではあるが、
床の上に衣類を散りばめるほどのことはないと思う。

女子ロッカールームの奥にある湯船の光景は、壮観という言葉がふさわしい。

女性が全裸で歩き回るのは、旅行先の旅館やホテルの浴場でも経験しているが、
フィットネスの女性風呂はかなり趣が違っている。

わたしが通ったフットネスのお風呂は旅先の露天風呂と似たような体裁で、
それなりの雰囲気がある。
岩肌に見立てた人工の浴槽造りには感激したけれど
そこを利用する女性たちの生態はかなり違っていた。

旅先の浴槽を利用する女性たちは老若を問わず
ある種の優雅な雰囲気を漂わせている。
浴槽の淵で身体をちょっと清めてから静かに浴槽に体を滑り込ませ、
浴槽内を歩くときは、浴槽の淵に置いたタオルを使い
腹部から下を覆っている。

フィットネスへ通うまではそれが普通の女性の入浴の姿と思っていたけれど、
フィットネスの浴槽を利用する女性たちの大らかさと言ったら・・・

体に一糸もまとわない姿でも、お侍さんが江戸の市中を見廻る際に
肩で風を切って歩くようなあのスタイルを採用しているから、
全裸のあけっぴろな身体を左右にゆすって堂々と闊歩する。

腹部が<身二つ>のように膨れていても
乳房の先の黒点がおへその近くでぶら下がっていてもお構いなしだから、
見ている方が思わず視線を伏せてしまう。

浴槽の淵で「身を清める儀式」をするのはごくまれで、
お侍さん歩きのままズボッと湯船に音を立てて入る。

思わずお顔を見ると、それなりに納得のいく雰囲気であったり
「どうしてこの方が・・・」と納得がいかなかったり。

同じ女族でありながら、旅行先の湯船とフィットネスの湯船では
どうしてこんなに差があるの?

フィットネスは元気を発散させるところだとは思っているけれど
同じ「女族」であるのに場面が変わるとなぜこのように激変するのか、
大いに考えさせられたのです。


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