第225回 お色気サービスもよりけり

スカイマークは今年の3月にエアバス中型機A330を導入し、
5月31日に羽田〜福岡線、9月から羽田〜那覇線、
来年1月から羽田〜札幌線に就航することを発表した。
その際に客室乗務員の制服を就航から半年の期間限定で
ヒザ上約15センチのミニスカワンピースにすることも併せて発表した。

ニュースで制服を着た客室乗務員を見た際に、
ひざ上15センチは想像していたよりかなり短く感じたが、
その姿で階段を上がる様子を下から撮った映像は思った通りである。
女子高生の極端に短いスカート丈が見せるパンチラ状況と何ら変わらない。

スカイマークのスカートはボディラインを強調しているせいか、
立ち姿だけで精いっぱい。
しかし、普通の制服でも重労働の食事等のサービスに、
あらたに恥ずかしい部分を見せないように気を遣う困難が、機内サービス中は常に伴う。
彼女たちにはかなり辛い状況だと思うが、それほどに気を遣ってもあの短さでは
「見放題」にさせてしまう可能性は否定できない。

スカート丈をせめてひざ上5センチ程度に出来なかったかと思うが、
それでは「お色気商戦」にはならないからか。

「ファストフードやファミリーレストランでもミニスカートの制服を導入している例もあり、
巷では「特に問題は無い」との声も聞かれたが、それは無知というもの。
空を飛ぶ乗り物に勤務する客室乗務員と、
地上で勤務するファミリーレストランの従業員では職務責任が根本的に違う。

客室乗務員の第一の職務は食事や諸々の気遣いのサービスではなく、
「危機に際したときの乗客の安全の確保」である。
つまり重要な保安要員なのである。

以前、テレビのドキュメンタリーで彼女たちの訓練の様子を見たが、
機内で見かける彼女たちからは想像できないほどの厳しさがある。
それらを考えると、酒席のクラブなどで採用するお色気商戦を
「空の乗り物」というかなりシビアな場面になりふりかまわず展開するのは、
「乗客を安全に運ぶ」責務より、企業利益第一が会社のコンセプトであることは明らか。

ニュー制服のお披露目の記者会見の席上で、心ある人は誰もが危惧する「保安上の問題」を、
心ある記者もまた質問した。
その際、記者に向かって放った逆ギレしたかのスカイマークの幹部の言葉に
テレビ画面のこちらの人は「すっごい人!」と、言葉を失った。

「客室乗務員の短いスカートが保安上の問題になるのなら、
乗客のみなさまにもそれなりの服装をしてくださいと言うことになりますね」

昭和7年の12月、日本橋の白木屋デパートで火災が発生した。
多くの女性が犠牲になったが、当時の女性たちの着物姿の下はノーパン。
命綱の下には多くの野次馬たち上を見上げている。
風が吹くと着物がめくれ、何もつけていない下半身があらわになってしまう。
それを気にして、ついロープから離してしまい多くが犠牲になった。

女性の羞恥心は命と引き換えにするほど強いという例であるが(昨今の女性の羞恥心は・・・)、
保安要員の女性が勤務中は絶えず短いスカートを気にするようでは、
危機に際して万全の対処ができるのか疑問である。

JALの客室乗務員が一時期、着物姿で機内サービスをしていたことがある。
とても評判が良かったが、「いざという時にふさわしくない」と、
保安上の理由から廃止に至った経緯がある。

欧米の航空会社の場合は、今回の制服姿を採用となれば
おそらく客室乗務員の女性たちから猛烈な「女性差別、蔑視」等の抗議により
中止に至ると思うが、もとよりこのような商戦の企画が案になることはないでしょう。

スカイマークは期間限定としているが、危機管理は待ったなし。
期間限定の言い訳は通じない。

命の危機よりもお色気大歓迎の鼻の下の長い男子ならともかく、
このようなコンセプトの会社の飛行機は間違っても使いたくないと思います。


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