第222回 なめたらあかんぜよ!

読売新聞にキャンパスミーティング「NHKへ学生が提言」なる記事があった。
受信料を負担することになる若年世代はNHKが最も取り込みたい視聴者層であり、
NHK経営委員会が若者の本音を聞き出そうと開催したミーティングとのことで、
3回目となっているようです。

ミーティングはNHKの経営委から3名、執行部から3名、学生側からは30名の出席者。
経営委側が最も聞きたかったことは「NHKを見ているかどうか」であったが、
ながら視聴者も含めて1日1時間以上、民放も含めてテレビを見ている学生が多く、
特に「一番の情報源がNHKで、最も信頼できる」の声もあがった。

ちなみに以前のわたしもそうでしたが、今では信頼できない方に傾いています。

ほかにも、「仲間と集まってもNHKをつける感覚がない」
「どんな番組を放送しているのかよくわからない。新聞でもっと告知してみては」
の声もあった。

ある理事は
「将来経営を支えてもらうためにも若者の視聴は大切(略)」と述べているようですが、
経営委が定期的に視聴者と行う集会では、番組の民放化への不満が毎回寄せられていると言う。

以前、わたしも別のコラムに、NHKが民放化するならば存在価値はないと書いていますが、
ミーティングに参加したある女子学生からは
「バラエティーは民放に任せればよく、NHKが無理して制作する必要はない。
 笑いも上品な方がいい」と、
お笑いタレントを多く起用する最近の傾向などに意見を寄せていますが、
NHKは「若者世代を取り込むには民放的な演出も必要」の立場を取っているようです。

新聞のNHKの番組欄の紹介を見ると、言葉や言い回し、内容までもが
民放の番組とほとんど変わらないと思えるものが多くを占めていますが、
以前は明らかに違っていたはず。

タレントやアイドル出演者もしかり。
NHKは民放化というより今や民放そのものの印象を受けますが、
その傾向はますます強くなっているように思えます。

ミーティングで毎回寄せられる民放化への不満をなぜ反省しないのか。
ミーティングは「改革に取り組んでいます」の姿勢を見せるための
パフォーマンスにすぎないのか。

読売の記者が大学でテレビを取り巻く現状について講義をした際に、
100人近い学生に「テレビは面白いと思うか、面白くなければ、どこがいやなのか」の
アンケートを実施した。
8割近くが「面白い」と回答を寄せたが、よく見るとほとんどがスポーツ番組やサッカー中継。
各局が力を入れているドラマは数本挙がったがあくまでも数本。
あの「半沢直樹」のヒットはなんだったのかと思うほど、
見られてはいないようだったと報告しています。

「脚本よりも、同じアイドルや女優の出演ばかりが優先されていてつまらない」
という批判もあり、限定的なアンケートではありますが、
若者たちがかなり批判的に見ている雰囲気が記者には伝わってきたとしています。

テレビに親しみを感じ、熱心に見ているのはそれより上の世代であろうと分析し、
若者向けに作られた番組が伸び悩む中で何が彼らの心をつかむのか、
真剣に考え続ける必要がますます大きくなっていると感想を述べています。

チャンネルを変える際に、いずれの局もひな壇にアイドルやお笑いタレントの顔を並べ、
自分たちだけで盛り上がっている番組構成が続くが、それらを目にするたびに、
このような番組がそれほど人気があるのだろうかと理解に苦しんでいたけれど
やはり若者たちでさえ、これらテレビの内容を批判的に見ていたようです。

そういった若者たちに対して、
「若者世代を取り込むためには民放的な演出も必要」と的外れな安易な発想は大変失礼です。
努力を惜しまない丁寧な番組作りで他とは一線を画す番組作りこそ、
若者はもちろん、多くの視聴者に支持されるのではないのか。

テレビ番組の安易な内容に対する批判や不満はネットにも溢れていますが、
番組の作り手たちは、自分たちが頭で作り上げた愚かな視聴者像に向けて
低俗な内容を発信し続けています。

制作者たちは視聴者の求めに応じた番組作りと自己満足しているようですが、
制作者側の愚かさを反映している内容と思えばそれなりに納得できます。

視聴者をなめたらあかんぜよ!


HOME  TOP  NEXT