第216回 殿方にゲーテの最後の言葉をプレゼント

今日もまた 皆が稼ぎしその金を 
奴に届ける この身悲しき

覚えていらっしゃるでしょうか、この嘆き節を・・・

大手信販会社<日本信販>の利益供与事件で
警視庁捜査四課が同社の総務部から押収したパソコンに保存されていた
短歌十首のうちの一首である。

奴等さえ なくなりゃ会社も楽になる
人の面した ハイエナたちめ

この一連の短歌のタイトルは「心の叫び」とか。

掲載新聞は、いずれも不本意なまま資金提供や接待を命じられたサラリーマンの
悲哀が伝わってくる内容だとしているが、本当に胸が詰まる。

このような事件が話題になると、
すぐに自分の身に置き換えて考える癖がある。

自分が彼らの立場だったらどうするのだろう・・・

それなりに正義感は強いつもりでいるけれど
内部告発はとても勇気を必要とする行為である。
もし告発者が判明したら自分の明日からの生活は一変する。
会社の存続に関わるような裏切り行為は昨日までの同僚や友人、
仲間からも後ろ指をさされるかもしれない。
世間でもいろいろ取り沙汰され、家族も巻き込むことになる。
特に日本の社会は構造的にも内部告発が難しい環境でもある。

読売新聞のLOOKにっぽんに米国でコンサルティング会社を経営している大沢裕氏が
「内部告発が生む健全な企業風土」の寄稿をされていた。

要旨は、米国には「ホイッスル・ブロウワー」という言葉がある。
直訳すると「笛を鳴らす人」、いわゆる「内部告発者」のこと。
大沢氏が米国の経営学大学院で学んだとき
「あなたが働く企業内部で不正や反社会的行為があるのを見たとき、一人の市民として黙っていてはいけない。それは組織人としての倫理を超えた人間としての義務だ」として、内部告発は裏切り行為ではなく社会正義だ」と教わったとのこと。
さらに「問題が発生するのは仕方がない。重要なのはその事実を速やかに開示して、
再発防止に尽くすこと」との常識があるという。

日本人としては耳が痛い。

なんだかんだと言われている米国ですが、
企業精神の健全性についてはやはり素直に認めざるを得ない。

だからというわけか、かなり前になるが米誌タイムスに
恒例の「パーソンズ・オブ・ザ・イヤー(今年の人)」に
女性三人が選ばれたが、いずれも内部告発者であった。

FBIのミネアポリス支局法務部長コリン・ローリーさん
話題のエンロンの元副社長シェロン・ワトキンズさん
ワールドコムの副社長の会計士だったシンシア・クーパーさん

輝かしい経歴の女性たちが、腕組みをした勇ましいポーズで
タイムスの表紙を飾っていた。

内部告発でも女性パワーが炸裂したわけですが
やはり世界的に女性は強いということの証なのか?
はたまた身軽で屈託がないからなのか?

妻や子を 泣かせぬようにと思いつつ
今日は今日とて 危な橋を渡る。

冒頭の十首のうちに含まれていた短歌である。

かの有名な文豪ゲーテ氏は己の臨終を文豪らしい表現でしめくくりました。
シガラミにガンジガラメの暗い世界に身を置く男性諸氏に心からご同情を申し上げ、
文豪の貴重なお言葉をプレゼントして差し上げたいと思います。

「もっと光を!」


※ 最近、文章ファイルの整理をはじめ、真っ青。
wordのdocxで保存した1000に近いコラム&エッセイのファイルを、
容量を軽くするために凄く時間をかけてメモ帳のtxで保存した・・・つもりだったのに
なんとメモ帳のdocxで保存してありました。
開いてみたらワケノワカラン文字や記号がズラズラ。

今は泣きながら、再度1000ファイルをやり直し(まだ100あたり)。
疲労困憊でも良いことがひとつ。
過去に書いたコラムでも時間の経過を感じさせない内容はアップ出来る!
なぜこちらをアップしなかったのかと思う内容もたくさんありました。
これから続々アップするつもりですので、よろしくお願いいたします。


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