第213回 警官を職務質問した女・・・

隣町の美容室へ行った。
家の近くの美容室で長くお世話になっていたママさん美容師さんが、
隣町に移ったので追っかけをした。

芸能人も有名人も、美容師さんも、追っかけはしない主義だけれど、
それなりの理由があります。

ふたりの子持ちのママさん美容師さんの技術は確かでしたが、
彼女が抜けたあとにわたしを担当したのは、
髪をツンツン逆立てた、スタイリッシュなイケメン美容師さん。

彼は外見とは違い技術の腕前はスタイリッシュではなかった。
髪をやたらと引っ張り、罪のないわたしを拷問にかけた。
しばらく通ったがついに我慢ができなくなり、
彼の休みを狙ってほかの美容師さんに鞍替えをした。

その人は、長いマツゲをくるんとさせたピンクの頬のAKB系美容師さん。
彼女のおぼつかない手つきは、自分のマツゲほどには
わたしの髪をくるんとさせることが出来なかった。

わたしは、ママさん美容師さんを頼り、わざわざ隣町に出向くことにした。

時間が迫っていたので、行きはバスを使ったが、
前から乗ろうとしたら、後ろからと言われ、乗ったけれどマゴマゴ。
東京でバスに乗るのは二度目なのです。

それゆえ、帰りはかなりの距離をブラブラ歩いた。

いくつも通りを横切っているうちに一番広い通りに出て、
信号待ちしながらよそ見をすると角に交番があった。

チャンス到来!

いつか警察官を尋問する夢を持っていたので、
ひとつ職務質問をしてみようと思い立った。

警察官は交番の中にひとり、外にひとり立っていた。
どちらにしようか一瞬迷ったけれど、
交番の中には小学生らしい男の子がひとりいた。
そちらにも興味をそそられたが、まずは手前から念願の職質といこう。

わたしは外に突っ立っている警察官に近寄った。

メガネをかけたブルーの制服の中肉中背の人は、
背筋をぴんと立てまっすぐに通りを眺めていたけれど、
歩み寄る人の気配を感じたのか、
日焼けした人の良さそうな顔をわたしに向けた。

「あの〜、お仕事中スミマセン。すこし質問(職質)させていただいてよろしいですか」
「ハイ、どうぞ(ニコニコ)」

(愛想のいい八百屋のオジサンみたい・・・)

「あの〜、ワタシ、怖いんです」
「??」

「いつ殺人の加害者になってもおかしくないんです」
「????」

「こちらの歩道は広いですけれど、ワタシひとりで道をふさいでしまうような歩道で、
背後からやって来る自転車に気がつかなくて、荷物を持っていた態勢をかえようとしたら、
自転車の人が、おっとっと! とヨロヨロして、車道に落ちそうになったことが何回かあります。
もし、その人が車にでも轢かれたら、ワタシ、殺人犯になってしまうでしょ?」

「いや、そんなことはありませんよ。自転車は歩道を走ってはいけないことになっていますから」

「でも、現実にはたくさん走っていますよね」
「いや、自転車は歩道を走っていけないことになっていますから」

「自転車に道路交通法が適用されることを知らない人が案外多いんじゃないかしら」
「いや、大丈夫です。自転車は歩道を走っていけないことになっていますから」

「でも、ワタシのせいで自転車の人が怪我でもしたら、結局、ワタシは罰せられるのでしょう」
「いや、大丈夫です。自転車は歩道を走ってはいけないことになっていますから」

「コチラでそうおっしゃられても、そのときになれば、きっとワタシが悪いということになりますよね。相手に怪我をさせるのですから」
「いや、そんなことはないですよ。自転車は歩道を走ってはいけないことになっていますから」

「オマワリさんは、きっとそうおっしゃるしかないと思いますが・・・」
「いや、そんなことはないですよ。自転車は歩道を走ってはいけないことになっていますから」

(さすが、プロ。完敗! 出直そう・・・)

※ おまわりさん、ご協力ありがとうございました。

  いつも日本の治安のために頑張っていただいて、感謝しています。
  最近はおまわりさんによる痴漢や盗撮などのハレンチが続いていますが
  一部の人だと信じています。
  キツイお仕事ですが、これからも日本の治安を守るために
  どうかよろしくお願いいたします。


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