第209回 無頓着爆弾の包囲網(植木のコンセプトその2)

朝、家の前の道路を掃いているとき異変に気がついた。
ブロック塀が損傷していた。

前夜の夜中、二階の部屋で鈍い音を聞いた覚えがある。
そのときは一瞬なんだろうと思ったが、
聞き間違いかもしれないと気に留めなかった。
翌朝、壊されたブロック塀を見て物音との関連性が浮上した。

過去に三回、我が家のブロック塀は被害に遭っている。

そのうちの一回だけは日中であった。
数軒先の工場に出入りしていた貨物車が犯人と特定出来たので、
数十万円の修繕費を負担していただいたが釈然としなかった。

形は元通りになっても職人さんが入っている間はお茶の世話をするために、
用事があっても家を空けられない。
損傷部分を解体する作業の電動音はジェット機の爆音並みで、
身体にも健康にも響いた(?)と思う。

粉塵が猛烈に舞いあがり夫の命の愛車は真っ白。
しかし、癇癪持ちのくせに外面を気にする夫は、
ここでも癇癪を封じ込め、気の好い妻に八つ当たり。

愛車は無理やりに白塗りの舞妓さんに仕立てられ、
家の中まで埃っぽくなったけれど、
ブロック塀損傷犯人がいる近くの工場からは挨拶にも見えなかった。

形を元通りにすれば、文句はないだろう!
そんな声が聞こえてくるようだった。

形を元通りに直してもらっても納得は出来ん!
こちらの受けた被害意識はそれ以上のものがあり釈然としない。

それでも弁償してもらえるだけ有難いと思ったのは、
被害が深夜や気がつかないうちに及んでいる場合は
犯人が特定できないから上記の精神的被害に重ねて、
修繕費も自己負担になるからやりきれない。

なぜ、我が家のブロック塀が被害に遭いやすいのか。

毎度同じ個所が壊される原因を追及すると、
四メートル道路を隔てたお向かいの家の植木に目星がついた。

我が家の前にお向かいの家が新築されたとき、
子どもの背丈ほどの植木が家の壁とフェンスのわずかな隙に整然と一列に配された。
いかにもおしゃれっぽく見えたが一抹の不安を覚えた。
過去のこの類の観察記憶から、家を新築する際に今植えた木が
将来どこまで成長するかを念頭に置かない人が
世の中には掃いて捨てるほどいると解答が導きだされているからである。

お向かいの植木はやはり二階の窓を越すほどに成長した。
木の形は三角錐のため下の部分が大きく膨らみ、
フェンスを越して道路上に傘のように大きく張り出している。
住宅街の狭い道路を覆う大きな傘は前方の視界を遮り、かつ車を通せんぼ。

我が家の斜め前はT字型道路で向かいの家のフェンス沿いに曲がる。
乗用車はもちろん宅配の貨物やらが我が家の前の道路を左に曲がる際は
必ず枝に遮られるから運転手さんは一度バックしてハンドルを切りなおす。
道路はすこし下り坂になっているからバックをする際にアクセルにやや力を込める。
狭い道路ゆえにその加減が難しく、下手な運転手さんの車は意思に反して、
勢い余って我が家のブロック塀に突きを喰らわす段取りのようである。

明らかに植木は狭い道路上の障害物となっている。
手入れをして欲しいと願っているがご近所付き合いを考え何も言えないでいる。

他から言われなくても、一目瞭然。
自分の家の植木がドライバーたちから<第一級障害物>に指定されているのは
わかっているはず。
お向かいの家もまた植木には無頓着系らしい。

日本人特有の慎み深さが外交上はマイナスとなり、
世界一外交下手な国として近隣諸国から手玉に取られ
情けない姿を晒している我が国の政府。

お隣とお向かいに包囲され無頓着爆弾を浴びせられ続ける我が家。
それでもじっと忍従の日々は
残念ながら我が国の政府の姿に重なっているようにも思えるから、
なんとかして欲しい、なんとかしなくちゃと、日々複雑な心境で過ごしています。

ところで、お隣やお向かいには陰でさんざ文句を垂れているけれど、
我が家には落ち度がないでしょうね。

不安・・・


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