第207回 深く静かに心を動かすもの

2013年8月5日号 AERAからの引用としてExciteがネットに掲載した記事に
興味を覚えました。以下はその要約です。

<広島は外国人にとって名だたる観光地らしい。5月に発表された
世界最大の旅行サイト「トリップアドバイザー」の
「外国人に人気の日本の観光スポット2013」の第1位が広島平和記念資料館だった。
外国人には京都のほうが人気があると思っていたのだが、どうやらそうではないようだ。

外国人観光客のお目当ては広島平和記念資料館(平和記念公園)。
多くの人はまず原爆ドームへ向かう。ドームの前の西蓮寺の被爆地蔵尊と墓地は、
今も68年前の8月6日当時のまま残る墓石や地蔵を目の前にして
涙する外国人観光客は少なくないという。

イタリア人クリエーター、ディエゴ・ピッチナートさん(30)の
旅行の一番の目的は資料館。
「広島は学校で学んでからずっと興味があった。
日本があの戦争から立ち直ったことに敬意を抱いている。
戦争と原子爆弾の影響を知りたかった。
資料館の中は、まるで教会のように静寂に満ちていたことに驚いた。
日本人はアメリカを声高に非難するわけでもなく、
展示が客観的だったのが非常に印象的だった」

実際、多くの外国人観光客が「客観的な展示」という感想を抱くと同時に、
だからこそ「自分はどうすればいいのかとすごく考えた」
(デンマーク・17歳・学生)と思うようだ。

スイス人のエンジニア、クリス・スタップフライさん(23)は
「広島では自分が教科書で習ったことが実際どのくらいリアリティーがあるのか、
みんな知りたいんじゃないかな。広島を体験したいんだと思う」

広島を訪れる外国人の特色は、圧倒的に白人が多い。
日本政府観光局の「訪日外客訪問地調査2010」のデータでは、
欧州・北米・豪州からの旅行者78.3%を占め、
広島は47都道府県のうちもっとも欧米系旅行者率が高い」(要約終)

外国人に人気の日本の観光スポット2013の第1位が
広島平和記念資料館と知り意外に思いました。
わたしも日本のイメージが強い観光地が一番と思いこんでいたからです。
しかし、広島の人気も「欧米系観光客」とわかれば、
それなりに納得できるものがあります。
紹介されている欧米系観光客の思いの深さに教えられ、感動を覚えました。

わたしが最も興味を覚えた点は、
広島平和記念資料館の展示内容が「客観的」であったこと。
ここにこそ日本人らしい「品性、特性」があるように感じました。
中国の長春の偽満皇宮の敷地内にある博物館には、
日本兵による残虐行為を強調した展示物がたくさん展示されていました。
敷地内にある旧日本館関連の記念碑や墓石が無残にひっくり返され
そのまま晒されていた現場を見た直後だったので、
日本人とわかったら危害を加えられるのではと
思わず周囲の顔色を窺うほどでした。

韓国のソウルの博物館でも同様な展示内容を見ました。
入場者の中には小中学生の団体もたくさんいたので、
韓国の教育の一端を見る思いがしました。

もちろん教育的な意味では日本の子どもにとっても
広島平和記念資料館は同様に見学の対象となっているはずですが、
恨みを込めた感情的な展示物と一線を画す「客観的な展示物」は
教育の在り方としての真価を発揮できるものと信じています。

米国が日本に落とした原子爆弾は表向きは
「戦争を早く終わらせるため」と言われているようですが、
どのような理由にしても決して許されるべきものではありません。
あれは「まさに人体核実験」とか、
「ロシアに原子爆弾の威力を見せつけるため」とか、
いろいろ憶測があるようですが、いずれにしても日本人にとって
これほど理不尽な恨み深いことはありません。
それでも「客観的な展示物」を出来るのがまさに日本人の品性と感じます。

米国への配慮ではといろいろご意見も出てくるでしょうが、
たとえそういう面が多少はあるにしても、
韓国や中国のように声高にあからさまに感情的にならない(なれない?)のが
日本人の特性ではないのでしょうか。

かつては奥ゆかしいと表現されたところのものですが、今は死語?
そのような特性が、時として外交上ではマイナスに働く面もあるようですが、
戦争犠牲者による客観的な展示内容は声高に感情を剥き出しにしたものよりも、
はるかに見る人の心を動かすものであると、外国の観光客から感じ取ることができました。

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