第183回 髪結いの亭主

美容室がパーマ屋と呼ばれていた時代の美容師は女だった。
当時は床屋は男、パーマ屋は女というように
棲み分けがあったように記憶している。

こういった表現がふさわしいかどうかは別にして(気を使うなぁ)、
当時は、男に適した職業、女に適した職業として
世間で罷り通っていたものがあり、それらは区分されていた。

戦後50年を経て、男女雇用機会均等法の後押しなどもあり
男女の職域の境界が取り払われた。
従来、男世界と言われてきた分野への女性の進出がめざましくなった。

船長、ダンプの運転手、パイロット、サッカー選手。

伝統の相撲の世界に及ぶに至っては、女性の審議委員を認めるか否かで紛糾し、
一時は世間を騒がせた。
従来から男の分野と言われていた職域に女が足を踏み入れたとたん、
たちまちニュースになったり物議をかもしだす。
名誉の称号である「女性第一号」という冠もいただく。

不思議に思うことがある。

「男子、厨房に入らず!」

この古くからの言葉は今は死語となり、
板前やコックとして男子は厨房でごく当たり前に振る舞っている。
むしろ、有名シェフと称されるのは男性たちの方である。
女の厨房に男子が入って、それがニュースとなったり世間をお騒がせした形跡はない。

「髪結いの亭主」なる言葉がある。

女が手に職を持てば亭主は遊んで暮せると言うわけだが、
女性の職域であったその髪結いの世界で、
気がついたら男の美容師が鎮座していた。
カリスマなる形容詞をくっつけて、すっかり美容界を席巻していた。

だが、こちらも「男性美容師の誕生第一号!」などと騒がれた形跡は特にない。
彼らがマスコミの寵児となって世間に騒がれたのは、
女性の分野に進出したという理由からではない。
「髪結い稼業」をファッション化させた手法に
あたらしモン好きのマスコミが飛びついただけのこと。

さすがに少なくなったとは言え、
女性第一号! なる文字は未だに紙面を飾ることもある。

男性に一号はないが、女性にだけ一号がある。

これって、オカシクナイ?(尻あがり)
うるさいオバサマ方、どうなのよ。

その昔、女性には二号なるものもあった・・・


HOME  TOP  NEXT