第173回 わたしが、情報操作なの?

日常の些細なことでも、情報を勝手に自分の中で操作していたと気がつくことがある。

たとえば、街のおしゃれなベーカリーや、スーパーの一隅にある
おいしそうな手づくりパン工房のパンにも、それは存在する。

最近、ふと気がついた。

同じ手づくりパンでも、食品表示があるものとないものがあり、疑問に思った。

さっそく店員さんに質問すると、答えが返ってきた。
「ラップに包んであるものは表示しますが、そうでないものは表示はしません」

「しません」というのは、つまり、しなくても良いということらしい。

なるほど、ラップには表示できるけれど、未包装のパンには表示のしようがないから?
パンの上には直接書けないもんネ。

すぐにネットで調べた。
「 未包装の食品、店頭で計り売りされる食品やパンなどのその場で包装されるもの、
 お弁当などの注文してから作るもの ・ 容器包装の面積が30cm2以下の小さなものは
 表示が免除されるものがあります」

未舗装だから食品表示は免責されるとは、材料や添加物等を消費者に伝える
本来の食品表示の主旨からするとわかりにくい理由だ。

もっとうまい(ちゃんとした)理由はなかったの?

わたしは、なぜ高い手づくりパンを買うのか考えた。
おいしいのはもちろんのこと、手づくりのパンは家で作るのと同じで、
添加物まみれの工場出荷のパンとは違うと考えていたからである。

納得がいかないので、店員さんにさらに突っ込んだ。

「手づくりのパンは、もちろんこちらで作っていらっしゃるのね」
「はい、焼くのはここでしています」

「焼くのって・・・焼くだけ?」
「ハイ、パン生地は専門の会社があります。そちらで作って冷凍保存したものを
 使っています」

「えっ、それじゃあ当然添加物も入っているわけね」
「はぁ、そのへんはちょっと・・・よくわかりませんが・・・でもウチのような
 手づくり店のパンは、ほとんど専門会社の冷凍の生地を使っています」

「手づくりって書いてあっても、焼くだけなのね?」
「まあ、そうですね。でも食パンだけはウチは生地から作っています」

手づくりパンはすべてその店で作っていると、長い間思い込んでいた。
紛らわしいのは、白い帽子をかぶったコックさんスタイルの人が、
ときどき奥の方にちらちら見えたりするから、
それが手作りのお墨付きの役割を果たしていたからである。

これらが与える情報は、自分の「思い込み」という情報操作で成り立っていた
とわかったが、最近も、テレビの情報に安易に乗り失敗した。

テレビの宣伝で、物を買ったり流行に飛びついたりはないが、
料理のレシピ情報にはとても弱い。

その時の情報内容は、
「電子レンジでホワイトソースが簡単にできる」というものだった。

ホワイトソース作りは、ダマを作らないようにするのが厄介なので
ピョンと飛びついた。

決め手は、試食したタレントさんが「おいしいー!」を次々に連発したからである。
もともと、タレントさんのレストランのグルメ情報はほとんど信用していないが、
やはりレシピには弱かった。

さっそくチャレンジ。

確かに、超簡単!
そして、超マズイ!

最近の若者の味覚はどうなっているの?

ホワイトソースは、溶かしバターに小麦粉を加え丹念に炒ることで
小麦粉の臭みを取るのがポイント。

しかし、電子レンジのチンは、溶かしバターに小麦粉を混ぜただけのものである。
当然のことながら小麦粉の臭みがそのまま残っているから、
ホワイトソースのうまみと味わいがまったくないのは当たり前。

情報を丸呑みしないで、年季の入った料理の知識を使って考えたら、
作らない前からマズイのはわかっていたはずである。
とても食べられたものではないと、捨ててしまった材料が惜しかった。

たかが手づくりパン、ホワイトソースの作り方なれど、
同じ考えがもっと重大な情報にも及び、
自分の中で勝手に情報操作が行われていたとしたら。

日常の小さな出来事から、自分の思い込みの情報操作や、
安易に情報に飛びつく思慮のなさを知ることになり、
重要な情報への姿勢を学ぶことになりました。


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