第171回 ゆりかごから墓場まで、オンナでいとうございます

あれはわたしがいくつのころだったろう。
年齢は定かではないが、まだ就学前であったはずである。
近所の家に男の子が生まれたとき、
その家に集まった村人たちは赤ちゃんを見るなり口々に言った。

「可愛いねぇ、女の子みたいだよ」

そのとき、子供心に不思議に思った。

わたしには赤ちゃんはみな同じに見えたから、女も男もなかった。
小さな手足がゼンマイ仕掛けのように動くのは可愛いかったが、
ちょっと奇妙なイキモノだと思った。

しかしその時<女の子、可愛い>という色分けのキーワードが、
わたしの頭にクサビのように打ち込まれた。
それから年ごろになるまでに、何度もこの言葉を耳にした。

あるときは、若い母親に手を引かれた小さな男の子に向かって
「女の子みたいに可愛いわね」と、行きずりの人が声をかけた。

わたしが大人になってからは、テレビの画面で美形の若者タレントが
「子供のころはよく女の子に間違えられました」と、
苦笑まじりにエピソードを語る場面でふと思った。

<女の子みたい>は<可愛い>にとって代わる形容詞なのか?

子供のころのわたしに関して言えば、特別に可愛くもなく不細工でもなくて、
その他大勢の中に紛れている普通のレベルであったが、
おませな子供のころをふと思い出した。

しかし、今はどうなのでしょう。

お化粧をすればまだそれなりの賞味期限は残っているものと
勝手に思い込んでいても、
気がつけば電車で駅をいくつか過ぎて行くおしゃれで人気な街へも
ノー・メイクで出かけるようになっている。

今は完璧に開き直り状態ですが、
やはり女性のタシナミは、墓場までオンナでいとうございます、でしょうか。

おや、外野さん、なにか御不満でも?

「へっ、女のタシナミなんて、今じゃ博物館の陳列棚に飾ってある
 旧石器時代の遺物と同じじゃねーか」

「・・・・・・」


HOME  TOP  NEXT