第156回 泣いた女がバカなのか、騙した男が悪いのか

テレビの過去の画面で、鳩山首相が街頭演説で声を張り上げていた。

「秘書の罪は国会議員の罪。私に同じことが起こったら離党ではありません。
 私はバッジを外します」

鳩山首相から糾弾されていたのは、当時の自民党の加藤紘一議員。
加藤議員は責任を取り、離党ではなく辞職した。
あっぱれと思った。

鳩山首相に同じ問題が浮上したとき、
当然のことながら過去の自分の言葉に従って辞職すると思った。

しかし鳩山首相はその後も平然と、しかも首相という座に居座り続けた。
一議員が責任を取ったというのに、
一国の総理が平然としているのをわたしは信じられなかった。
他人には辞職させて、自分は知らんぷりとはどういう神経なのか
とうてい理解できなかったが、宇宙人は倫理観がないの?

鳩山首相は、時効と言う名の合法的な手段で莫大な脱税もしている。
納税の義務を怠るのは一介の国民でも問題であるが、
それより格段に責任の重い立場の総理大臣が脱税とは大問題である。
なぜかメディアはほとんどスルー状態なのは、なぜなの?。

自民党の当時の麻生首相のプライベートの飲食を、
国家的大罪のごとく大々的なキャンペーンを張ったのは、なぜなの?

本来ならば辞職が当然であるから、わたしは鳩山首相を信じられない以上に、
これだけのことに対しても国民の多くがまだ
「辞任は必要なし」と思っている事実が信じられなかった。

総理大臣が真っ赤なウソや脱税をしても許されるならば、
政治の世界はこの先もウソをつき、
不祥事を重ねても良いとお墨付きを与えたのも同様で、
この先の不祥事に対して国民は糾弾出来なくなる。

事実その後も、鳩山首相はウソと詭弁を弄し続けているが、
国民がそういう総理大臣を作ってしまったのだ。

我が家はちょうどニュースの時間に夕食をとるから、
政治のニュース画面を見ながの食事はまことに消化に悪い。

「鳩山さんて一体どういう人なの。何を考えているのかしら」
「何も考えちゃいない!」

夫は、ご飯の代わりに苦虫を喰ったような表情をする。

「宇宙人とはよく言ったものね。とても理解不能だもの」
「もっと始末に悪い! 宇宙人が気を悪くする」

「あの人、自分の発した言葉の重みをどう感じているのかしら」
「何も感じちゃいない」

「あれだけ世間が騒いでも?」
「カエルのツラにションベンだ! 世の中で一番厄介な人種だ」

「まあ、ション・・・なんて品が悪い。せめてオシッコと言ってちょうだい」
「平気でウソをつくヤツの方が1000倍も品が悪い!」

「あらぁ・・・それもそうね」

(わたしは鳩山総理のせいで、心ならずもオットの品の悪さを
 妥当だと認める発言をしてしまいましたが、このように影響は大なのです)

夫とわたしは似たもの夫婦で、日ごろから群れるのは苦手で、
芸能人や有名人にフアン心を持つこともない性格だから、
政治にしても特定の支持政党を持たない。
日本の国の安全を守ってくれ、国民が安心して幸せに暮らせる国にしてくれるなら、
どの政党だってかまわない。
ただし、民主主義の体制が変わるような政党だけは困るけれど。

あえて言うならわたしたち夫婦は「どっちつかず党」であるから、
自民党時代にもテレビを見ながらお茶の間で批判に明け暮れた。

しかし、そのときは日本の存亡危機までは感じなかった。
最近は安全、経済、財政について、このままでは日本の国はどうなってしまうのかと、
これまでに感じたことがない不安を覚えるようになった。

子どもの教育にしても同様。
総理大臣がウソをつき続け、
国民の義務でもある納税を軽んずる姿を見せ付けられながら育つ子どもは、
政治家や政治を信用しなくなるのではないの。
子ども手当てを支給しても育てる側の大人の資質がこれではお粗末過ぎる。

子どもへのアンケートで「こんな大人はイヤだ」で、
鳩山首相は大差をつけてトップに挙げられたが、
子どもたちに一番軽蔑される大人が総理大臣の国なんてほかにあるの?

この問題を笑い種や軽く見ていると、
きっと将来強烈なしっぺ返しを喰うことになるでしょう。

鳩山政権は格言の宝庫でもある。

朝決めたことを夕方に変える<朝令暮改>を、鳩山首相は臆面もなくやってのけた。
選挙前に少数で短期間で決めたと言われるマニフェストは<泥縄式>。
そのせいか高速道路無料化等のさまざまな政策に対する大臣の発言にしても
コロコロ変わる。

公立高校授業料無料化が、既に授業料免除を受けている低所得者層には恩恵がなく、
むしろそれ以外の層に恩恵があることなど、一介の主婦でもわかることが、
政権樹立後しばらくしてからその欠陥が問題になりニュースになった。
マニフェストを作成する際に、きちんと内容を精査していれば
中学生にでもわかる程度の矛盾である。

いかにマニフェストが財源の確証や内容の精査なしに安易に作成されたかは、
その後の数々のマニフェスト実現に向けてのほころびに現れている。

国民との大切な約束の場に、
他国の政府が使っている<マニフェスト>なる言葉を借用したのは
意識が軽い証拠では?

横文字のほうが耳に届けられたときにカッコイイと体裁にこだわるのは、
一般世間でも内容の乏しさをごまかすときの常套手段。

なぜ自国の言葉で<政権公約>としないの。

そうすれば「我が政党の<政権公約は>」と口にするたびに、
その重みがそれを口にする当人に厳しく伝わるはず。

実態は中高生の<売春>であるのに、
マスメディアが<援助交際>なる言葉を流布させて、
罪の意識を軽くしたのと同様ないかがわしさが
<マニフェスト>の表現には感じられる。

選挙だけを目的に作られたマニフェストは、
わたしのような知識のない人間でも項目を一読した時点で、
「どうしてこれだけのことがこんなに実行できるわけ?」と疑問に思うもので、
サギ集団がバラ撒くばら色の勧誘チラシの内容のような胡散臭さを感じた。
だから別のコラムの発信ですぐさま書いた。

アンケートで、民主党のマニフェストをそれほど重視しないという結果が出ている。
国民はとにかく自民党政権を変えたかった、その一点であるような気がする。
変えて悪くなったら目も当てられないことになるけれど。

世間ではサギから身を守る手段として
<うますぎる話には要注意>とアドヴァイスするが、
それは政党のマニフェストにしても通じるものでもある。

鳩山政権には格言がよく当てはまると思ったが、
歌謡曲のヒット曲の歌詞も合うと思った。

たしか西田佐知子さんのヒット曲「東京ブルース」一節。

 泣いた女がバカなのか
 だました男が悪いのか

松山恵子さんのヒット曲もあった。

 あんた泣いてんのね。
 だから云ったじゃないの、
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 男なんかの言うことを、バカね
 本気に本気にするなんて
 まったくあんたはウブなのね

男女の仲と、政治の世界の国民と政党の関係は似ているのかも・・・
詐欺の手口を信じてしまうウブも良し悪しですね。


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