第147回 子どもとワンチャンの、教育の落とし穴

お散歩に出たとき、生垣のそばに30歳代の茶髪の女性がいた。
彼女は中腰になって、なにかしきりに怒鳴っていたが、
彼女の陰に、猫より小さいと思われるワンちゃんと、
それより一回り大きいワンちゃんがいた。

いずれも、昨今のメタボ腹犬とは縁遠いとてもスマートなワンちゃんで、
外見は骨格に皮が張り付いているだけのような印象だった。
ちょっと強く息を吹きかけると吹き飛ばされてしまうような頼りない様子ながら、
恐縮した表情で、上目遣いにご主人さまの顔色を窺っている様子がおかしかった。

「何でも食べちゃダメって言ったでしょ!」

ワンちゃんはそこらに落ちていたものを口に入れてしまったらしい。
犬や猫が落ちていた食べ物を口にして死んでしまったニュースが流れたこともあり、
飼い主としては心配なのか、彼女は何度も繰り返し叱っていた。

これでワンちゃんは落ちている食べ物を口にしなくなることでしょう。
なぜなら、彼女の叱り方はとても正しかった。

犬や猫のような動物は、時間の観念欠落しているらしく、
失敗をやらかした時は即座に叱らないと駄目らしい。
ソファの上でオシッコのシミを見つけて、後から強く叱っても、
当人はどうして叱られたのかわからないから効き目がないという。

そこで思い出したのが、イギリスで制作された子育ての番組の内容である。

3歳児以前は、ワンちゃんと同様に時間の観念がないという。
子育て中のママが、言うことを聞かない3歳になる前の我が子に
「さっき言ったばかりでしょ。どうしてわからないの!」と叱るのは、
まったく意味がないようである。

後からいくら叱っても、幼児の学習にはならないことを、
ママも学習をするべきですね。

このポイントを押さえておくと、同じ失敗を何度も繰り返して
ママをイライラさせる我が子に「この子はパパに似て頭が悪いのかしら」と、
(世のママ族は決して自分に似ているとは思わないらしい?!)
パパのせいにすることもなく、別の視点で眺められるようになり、
少しはイライラが解消するのではと思っています。

ところであなたは、ご近所の犬の無駄吠えに悩まされた経験はおありですか?

わたしは運が悪いのか、結婚当初に住んだ家でも、そこから引っ越してからも、
隣家の犬の無駄吠えにとても悩まされた。
最初の家はちょうど寝室の下辺りに犬小屋があり、最悪だった。
性質の悪いその犬は、深夜から明け方にかけてお勤めのように毎夜鳴き通したので、
オーバーに言うと気が狂いそうになった。
近所付き合いを考えると怒鳴り込むわけにもいかなくて、
じっと我慢をするしかなかった。

新しく買い替えた家の引っ越した先でも同様。

犬の鳴き声がうるさいのは飼い主の家でも同じはずだから、
愛犬ともなると、深夜の耳障りな鳴き声も
心地よい音楽のように聞こえるものなのかと感心した。
飼い主の無頓着らしい様子に、やはり我慢するしかないと諦めた。

それから数年経ち、犬はウンともワンとも吠えなくなり庭から姿を消したので、
死んだことがわかり、ワンちゃんには気の毒だけれど内心ホッとした覚えがある。

その後、今度はカナダの番組だった。
自分の我がままを押し通すのに、泣きわめいたりする聞き分けのない幼児の躾について、
幼児教育専門の博士が両親に向かってアドヴァイスをした。

「子どもは我がままを押し通すよりも、自分に関心を持ってもらいたくて、
 泣いたりわめいたりするのです。そのようなときには放っておきましょう。
 しまいには諦めて泣いても駄目だとわかるようになります」

あれ?

また思いだしたのが、かつて犬の本を読んだとき書いてあった内容。

「犬の無駄吠えをなくすには、犬が鳴いても顔を出してはダメ。
 <鳴いちゃダメ>と顔を出して叱ったら犬の思うつぼです。
 犬は自分に関心を持って欲しくて鳴くのです。そういう時は無視しましょう。
 そのうちに鳴かなくなります」

動物と人間の子育てには共通点が多いものだと感心した。

では、隣家の場合はそのつど飼い主が注意していたから、
鳴き癖が直らなかったのか?

ずっと様子に注目していたが、
飼い主が深夜にわざわざ起き出して叱りつけたことは一度もなかった。

ではワンちゃんと幼児教育の教えのどこかに落とし穴があったのか? 

それは未だにわからないが、もし飼い主が叱っている様子がこちらにも伝わってきたら、
それだけでもイライラはかなり解消されたはず。

つまり、このような場合は直接的なワンちゃんの鳴き声よりも、
周囲の迷惑に無頓着な飼い主に対する不満が募るものなのだと実感した。 

いずれにしてもペットを飼うときは周囲に配慮して
迷惑にならないように飼いましょう。



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