辛口コラム  チャン・ツイーさんは好きだけど・・・


第137回  チャン・ツイーさんは好きだけど・・・

過去の新聞のアンケートに、
日本と中国の大学生に、相手国で一番好きな人物を選ぶものがあった。

中国の大学生の一位はノーベル賞作家の川端康成氏、
二位は数学者で、数学界のノーベル賞と称されるフィールズ賞を受けた
小平邦彦氏であったから、中国の大学生の思いがけない通ぶりとシブさに感心した。

一方、日本の大学生の一位は女優のチャン・ツイーさん、
二位がジャッキー・チエンさんの有名俳優が占めた。

うーむ。

芸能人にフアン意識を持たないわたしでも、チャン・ツイーさんには好感を持っていますが、
しかしねぇ・・・

これまで目にしてきた日本の若者像からすると、
妥当な結果とは思うけれど、この結果はかなり・・・不満!

情けないけれど、これが日本の若者の現実なのでしょうか。

それぞれの国の未来を背負っている若者たちへのアンケート結果は、
その国の未来をも暗示しているのかもしれないと思うと少し寂しくなったけれど、
若者の意識が寂しいものならば、分別盛りの中高年層の乱脈ぶりは
目を覆いたくなるのが現状です。

かつてのニュースで、高速道路のサービスエリアやパーキングエリアに
家庭ごみや粗大ごみが持ち込まれて、
その処理費用が年間約15億6千万円と試算され問題になっていたけれど、
これらに限らずモラルの低下は日本中を汚染しているようです。

一番驚いたのは、四国八十八ヶ所の霊場を巡る「お遍路」のモラルが問われていることです。
遍路道でごみをポイ捨てする「お遍路」がいて、
地元の人たちも信じられない光景だと嘆いているとか。
通りがかった乗用車の窓から、白いポリ袋が路上に放り投げられ、
使用済みのお手拭やはし袋、おにぎりの包装などが散乱したけれど、
車にはお遍路装束の中年の男女が三人同乗していたという。

そもそもお遍路とは「遍路の旅で人生を見つめ直したい」と、
つまりは自分を見つめなおしたいと考える人々であると思っているけれど、
近ごろは若者層にも人気があると聞く。

これもメディアの紹介による流行なのでしょうか。 

しかし、年齢層は中高年層が圧倒的に多いようです。
定年退職を機にお遍路の旅に出た知人がいましたが、
中高年層は時間が自由になるという要素と共に、
過ぎた人生を振り返ってみたいという真摯な欲求もあるようです。

それにしても「お遍路」の成り立ちを思うとき、
お遍路さんがごみをポイ捨てとは、地元の人ならずとも信じがたい。

小さな事柄と言ってしまえばそれまでですが、
毎日のお散歩で目にするのが中高年層による信号無視です。
10年ほど前までは、赤信号無視の姿を見るのは稀だったけれど、
ここ数年の間に、それが日常の風景として当たり前に見られるようになった。
それも圧倒的に高齢者や中年が多いのはなぜなの?

10年前は律儀に規則を守っていたひとたちが、
中年、高齢になって平気で規則を破るようになったということになりますが、
一体原因はどこにあるのでしょう?

大人を真似て育つ子供や若者層ならば多少なりとも理由づけはできますが、
すでに分別のある中高年層のモラルが、
いきなり春先の雪山の雪崩のように一気に崩れ落ちてしまった背景は、
何に起因するのでしょうか。

ゴミ問題にしても決してちいさな事柄ではないはず。
わたしの散歩コースの河川敷も、近年は際立ってゴミの投げ捨てが多くなり、
住宅街の路上にも目につくゴミが増えている。
その散乱している様子を目にすると、
自分の心までささくれ立ってくるような気分に陥るから、
このような心理状態が世相に反映して世の中が荒れ、
さらに世の中の荒れがモラルを低下させる悪循環となっているのではと
気になっています。

しかし、そのような環境を見捨てられない人がいるのも救いです。

最近、30歳代らしい男性が浅瀬を長靴でまさぐりながら小川のゴミを拾っていました。
わたしは感謝の言葉を述べながらすこし話をしましたが、
手に持ったゴミを入れる黄色いビニール袋は市役所へ行けばもらえると聞いたので、
わたしもさっそく市役所へ行こうと思った。
これまでは目についたゴミを拾いたくても自宅まで持ち帰るのが厄介であり、
さらにわが市のゴミは有料なのでとてもじゃないけど、
他人さまのゴミの代金まで立て替える気力もオカネもありません。
しかし、拾ったゴミは市役所へ持ち込めばOKのようです。

無理をしないで自分に出来る範囲で、
毎日お世話になっている河川敷をきれいにしたいと思っています。

それにしても、日本人のモラルの低下の加速度は半端ではない。
「美しい日本」などと、抽象的で暢気なキャッチフレーズを
振りまいている時期ではないはず。
根本的な政策に基づく手当てを早急に講じなければ、
このままではどうなるの、ニッポン!


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