第132回 ゲイではなく、芸で勝負を!

アメリカ旅行から帰って来たとき、気になることがありネットで検索をした。
その文字を入力すると<人類の起源>という書き出しで、
そのあとに<ホモとは人類のことである>とある。

違う、違うと独り言をつぶやきつつ、
はてなダイアリーで自分の求める回答を得た。

ホモ、「ホモセクシャル」。同性愛者、狭義には男性の同性愛者をさす。
近年ではそれぞれに「ゲイ(男性同性愛)」、「レズビアン(女性同性愛)」などの
呼び方をする事も多い。

この回答により、
わたしはようやく<ホモ>と<ゲイ>が同様の意味を持つことを知ることができた。

どこがどう違うのかとずっと疑問に思いつつ、
さしあたって自分には関係のない事柄と過ごしてきたけれど、
急に調べてみようと思っい立った理由はアメリカ旅行中にあった。

アメリカのドライブのコースで見かける町や村は、
日本と違って「これが町?」と、あてが外れる。
半日走っても人家の途絶えた道中が続き、
地図上で集落らしい名前の文字を見つけると、
これでどうやら人里にたどりつけると思い込んでほっとしてしまうが、
当てにしていたホテルはおろか、おやつを買う店さえなくて戸惑うことがある。

カメロンの地名を地図上で見つけたときも、そんな思いがあった。

大きな土産物の店舗の前に、少しばかり広いスペースの駐車場があり、
その周囲にガススタンドと小さな郵便局、1軒のホテルが
こじんまりと寄せ集まっているだけである。

それでも地図上ではちゃんと名前が載っているが、
広いアメリカの国土ではそれだけの人家でさえ記載するほどの土地も多い。

小さなカメロンの空間は、古いアメリカのノスタルジィを感じさせる雰囲気があった。
駐車場を出た国道の傍らに二本の橋が架けてある。
ひとつは新しい橋、他方は今は使われていない古い橋であるが、
その風情になんとなく郷愁を誘う雰囲気がある。
そのせいか、カメロンは観光客に知られているらしく、
広い駐車場は車で埋まっていた。

車の持ち主の観光客はほとんどが店の中にいるので表に人影はなかったが、
土産物店の壁に沿って長いベンチがありそこに観光客がふたり座っていた。
連れらしいカップルは揃って髪が短く、体型も同じお相撲さんクラスで、
雰囲気も全体の印象もとても似通っていたので、
姉妹? いや兄弟? と思った。

典型的な熟年のアメリカ人体型をした女性? いや男性か?
それはともかく、その人たちのそばに猫が一匹いた。
猫に目がないわたしは「またぁ」と言いたげな夫を無視してそばに近づいた。
ひとりと目が合ったとき、どちらともなく笑みを交わすと、
その後は、進行プログラムで決められているかのような会話が始まる。

「どちらから来たの?」

その声を聞いて、わたしはさらに迷った。
それは船出を告げるドラの音のようなダミ声である。
女性でも稀にそのような声の持ち主はいるけれど、果たして性別は?

その人は連れになにか話しかけたが、わたしはますます混乱した。
会話に応じた連れの人は声までとてもよく似ていた。

夫もふたりの雰囲気に戸惑っていたようだ。
受ける感じが夫婦らしかったので、「どちらが奥様かしら?」と夫に囁いた。
「オレもわからん」と夫は言った。

ならば胸の盛り上がりで判別しようとしたが、
関取のような体型の人たちは胸と腹部全体が盛り上がっていて
判断するのが難かしい。

シアトルから来たというその人は膝の上に抱いた猫ちゃんを撫でながら
「猫はペットではなく、大切なパートーナーなの。だからどこへ行くのも一緒よ」
と言ったあと、ふと何かを思い出したように
「日本ではゲイはどう思われているの?」と付け加えた。

えっ!?

唐突な質問にわたしはひどく戸惑ったが、
すぐにテレビで花盛りの様相の女言葉を使うタレント? の面々が脳裏に浮かんだ。

「以前は特別な存在として奇異な目で見られましたが、
 今はテレビで人気者になっていますので、
 ある程度は世間的に認知されていると思います」

知っている限りの単語を並べて伝えたが、果たしてうまく伝えられたのだろうか。

「そう・・・」とその人は言ってちょっと微笑んだが、
その瞳は遠い目つきをしていた。

好奇心の強いわたしは
「シアトルではどうなのですか?」と質問しようとしたが、
それを口に出来なかったのは、その場にふさわしくないと感じたからだ。

彼女? いや彼? は、どうして唐突にそのような質問したのか。

日本のメディアに皆勤賞のごとく登場する女言葉を駆使するタレントを見ると、
時折アメリカで出会ったカップルの様子を思い出すが、
日本でゲイを売りにしている彼らの胸中はどうなのだろう。

テレビ画面で見る限りはあっけらかんとしているようにも見えるし、
ゲイを売りにして得た豪華な生活ぶりを披露する人もいるが、
その陰でカミングアウトする勇気のない一般のゲイの人たちは、
毎日のようにメディアに登場する彼らを見てどのように感じているのだろう。

ゲイが異常にモテはやされ社会現象にもなっている日本の現状を見たら、
シアトルのカップルはどのように感ずるのだろうか。

それゆえにテレビに出るタレントさんは性を売りにする<ゲイ>ではなく
真っ当な<芸>で勝負して欲しいと願っています。

特定の性にスポットを当て、それを売り物にするような
思慮に欠けたマスメディアの態度は大いに反省すべきだと思いますが、
古いんだよアンタは! と外野から声が飛んで来るかも・・・



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