第130回  食品表示の役割って何なの?

2年ほど前に家の近くに出来たスーパーマーケットは、
商品の価格が他よりも安いのを売りにしている。

確かに安い。

コンビニで130円くらいのブランドのペットボトル飲料が88円で提供されるが、
他のブランド商品もかなり安く手に入るから、消費者にとってはありがたい。

わたしが最もありがたいと思うのは、夫の好物の刺身の盛り合わせである。
メインはマグロの中トロか赤身で、他にハマチ、イカ、甘エビ、タコ等が常連で、
時にはウニや他の魚介と入れ替わることもある。

盛り合わせ価格は980円也。

他のスーパーの同様の商品と比べると2〜3割は安いかもしれない。
盛り合わせの見栄えもおいしそうだから週に1度は買っているが、
時々980円を消して780円のサービス価格になる。
200円の差は主婦にとっては魅力である。

サービス価格の設定の根拠が、曜日なのか時間帯なのか、
ズボラなわたしにはわからない。
サービス価格はお散歩が遅くなったときに立ち寄るとめぐりあう機会が多い。
遅い時間帯でも980円のまま変わらない時もあれば、
早い時間帯でもなぜかサービス価格の780円が表示してある時もある。

スーパーの安売りの折込チラシをまったく見る気のないわたしには謎であったが、
ある日とうとう好奇心が爆発して、売り場のオニイサンに聞いた。

「お刺身の盛り合わせが遅い時間帯でも980円が780円にならないのはなぜ?」
「ああ、ソレ? マグロが生か冷凍かの違いですよ。生はずっと980円のまま」

うっそー、そんなカラクリがあったの。

じゃあ、同じ980円の時の生と冷凍の違いの差はどうしてくれるのよ?

よく観察しても冷凍と生のマグロの違いは素人のわたしにはわかりにくいが、
他の人はどうなのだろう。
買い物に忙しい主婦の眼力がそこまで気がつくものなのか。
そのような微妙な違いを見破る術を、わたし自身は持ち合わせていない。

言葉は悪いけれど、これって消極的表示詐欺ではないの?。

こんな紛らわしい販売方法はやめて欲しいと思っているけれど、
この紛らわしさは現在の食品表示方法にも似ている。

現在の食品表示を正しく理解できる消費者がいったいどれだけいるのだろう?
表示とは<消費者にこの商品の情報を提供します>の使命を負っているはずだが、
現在の食品表示制度ではその役目をきちんと果たしていないと思っている。

消費期限、賞味期限、品質保持期限。

まるでクイズ問題のような表示であるが、それでもある程度は内容の察しがつく。
しかし、原産地表示となると情報がスクランブル状態で、
本当にこれが消費者に情報を提供している状態なのかと疑問が沸き起こる。

たとえば、刺身は生鮮食品として原産地表示の対象となるが、
刺身を盛り合わせにすると加工食品として原産地表示の対象から外される。
わたしは刺身の消費者として、盛り合わせの魚介類の原産地を知りたいと強く思う。

もちろん他の食料品にしてもこの表示方法は同様だから、
消費者が真に知りたい情報が表示されていない場合が多いことになる。

有機野菜の定義を即答できる消費者はいるのだろうか。
無農薬野菜と謳っても化学肥料は使える。
無農薬だから化学肥料は使っても問題はない。

しかし有機野菜や無農薬野菜を求める消費者の志向は、
化学肥料も気にするはずであるが、わたしもそのひとりである。
 
だが無農薬野菜と表示されていると、
化学肥料も使われていない安全な野菜と捕らえがちであり、
無知のわたしはしばらくはそう思い込んでいた。

塩分控えめの表示にしても、調べてみるといろいろ紛らわしい。
その内容は一口では説明できない複雑なものがある。
真に塩分控えめと言える商品なのかと疑いたくなる表示内容なのだ。

これらの食品表示方法をもっとスッキリさせて、
消費者にわかりやすくできないものなのだろうか。
現在の食品表示方法はお世辞にも消費者のためのものとは言えない内容である。

消費者にわからない食品表示の役割って、なんなの。



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