第123回   男と女の「品定め」

ある日の読売に、ちょっとおもしろい記事があった。
タイトルは「なぜなの? 男と女」

出かける寸前まで鏡の前にいる妻に、夫はいらだって思う。
「時間をかけても変らないのに」

妻の立場のわたしにはこの光景に心当たりがありますが、
記事を読んで夫の心中が読めたような気がする。

一方の妻は、何かと言えば物を集めたがる夫を冷ややかに眺めるが、
それは時計や万年筆だったり、ビンのふただったり。

妻は思う。

「時計なんてひとつあれば十分じゃない」。

その通り!

なぜ女性は身を飾ることに熱中し、男は持ち物にこだわるのだろうという疑問。

これについて専門家は分析している。

「それもこれも人類ならではの良い伴侶を見つけるための戦略にある」

東大大学院総合文化休暇研究科の長谷川寿一教授は語る。
「多くの動物では、メスの側に伴侶の選択権があるのが普通です」

クジャクは美しく大きな尾羽を持つオスがメスに選ばれる。
目立つと敵に狙われるハンディをそれだけ背負うことになるが、
「自分の生命力はそのハンディを上回るほど強いと、そのオスは誇示できる」と、
進化学者のザハヴィの説である。

前述の長谷川教授は述べている。
「だが、ニンゲンは男女が互いに選び合う。そこが多くの動物と決定的に違う」

若い男女が出会う。
その瞬間、双方は相手の第一印象を決める。
つまりは「品定めということになるが、
米国や豪州などの研究は「品定め」に要する時間を5秒とはじき出した。
女性は相手の目や顔を平均22.5回注視したが、
男性は相手の顔と体に12.8回視線を走らせただけで印象を決めたようだ。

これはなかなか興味深い。

わたしの年齢ではすでに「品定め」の陳列棚から排除されてしまっているけれど、
初対面の男性と会うとき相手の視線の方向をチエックする際に、
なかなか参考になるデーターである。

研究結果では次のように結論付けている。
「異性に接するとき、女性のほうが慎重に相手を見定める傾向がうかがえる」

出産・育児を担う女性は、
「よりよい伴侶を見つけたい、自分の遺伝子を次の世代に確実に残したい」と、
進化の過程で、自分や子をしっかり保護してくれる相手なのかどうか
男性を見る目を養ってきたが、相手を見きわめながら、
女性は化粧をし着飾って若さや魅力をアピールする。

男性はというと「自分にはあなたや子どもを養える資産がある」とアピールする。
これが女は着飾り、男が持ち物(資産)にこだわる根拠だとか。

なるほど。

男と女の間には暗くて深い谷底があると聞いた事がありますが、
奥もなかなか深いようです。

ちなみに、カップルが別れた場合、男女のどちらが未練がましいのか。

数百人を調べた東大の研究では、
女性はひとりの相手を思う期間が平均3ケ月に対して、
男性は6ケ月の2倍の結果がでた。

長谷川教授は述べる。
「<閉経>という期限を切られている女性は見切りをつけるのも早いのではないか」

記事の最後はこう結ばれている。

<広い世界で出会い結ばれたふたり。
 それを考えれば伴侶を思う心も、もっと深くなると思うのですが>

なにやら担当記者の思いを反映したような締めくくりではありますが、
お説ごもっともでも、この統計が取られてからすでに数年は経っている。
その間に男女の世界は激変しているはず。

最近のニュースでは男性ブラジャーが売れ、
新聞写真ではスカートをはく男性の特集を見たばかりである。
女性が身につけるためにフンドシを買うとのトピックスもあった。
さらに、同じくニュースで男性の染色体がなくなり、
未来は女性の染色体だけになると科学的根拠が発表された。

道理で近ごろの男性が、いやに女性化傾向が強いと思っていたけれど、
まんざら印象だけではなかったようです。

昨今では社会的な要因もあり、「自分にはあなたや子どもを養える・・・」と
胸を張る男性がどれほどいるのかしら?

わたしは未だに「男らしく、女らしく」などと、妄想を抱いておりますが、
これは差別という意味ではなく、
男女を区別するための美しい特徴として捉えています。

電極のプラスとマイナスが引き付けあうのは、
お互いに足りない部分を補い合おうとするからでしょう?

男女の特徴まで均してしまい、言葉や仕草、身を飾るものや装いのすべてにおいて、
男女間のバリアフリーが進んでいる今、
どちらが男か女かを、どのようにしてお互いの性(魅力)の違いを認識して
惹かれあうことができるのでしょう?

あーあ、つまんない世の中になったものだわ・・・


HOME  TOP  NEXT