第113回   スーパーのお毒味役

最近は、さまざまなメディアによる表示疑惑の実態暴露や、
あの手この手の汚い奥の手を消費者にもわかりやすく情報提供してくれるので、
消費者の知識も以前に比べたらかなり向上してきているはず。

しかし、コチラが賢くなればアチラの手も悪質化するのが習わしで、
いずれの世界でもイタチごっこというものは付きものであるようです。

ある日のテレビで、
元スーパーの従業員が鮮魚類の表示疑惑について顔隠し出演していたが、
魚メニューが中心の我が家の食卓にとっては聞き捨てならないことが語られていた。
 
マグロのサクと呼ばれている大きな切り身が売れ残ると、
一旦は奥に引っ込められ、今度はちいさな普通の切り身に姿を変え、
それに合わせて賞味期限の日付も変えて再び売り場に登場する。
それでも売れ残ったものは、またしてもぶつ切りに姿を変えるというから、
当然のことながら賞味期限も変えられる。

姿を変えられるごとに店員が「お毒味役」をするという。

それで問題がなければ、リニューアル商品にもかかわらず、
陳列棚という舞台で新顔として繰り返しスポットライトを浴びるわけである。
本物の役者も顔負けの七変化ぶりだが、
顔隠し元店員も「お毒味役」をしたことがあるというから、
たとえスーパーの店員さんであっても、命をかけることになりそうです。

なんという恐ろしいことが行われているのだろう。
しかし、これまでにも食品関連のこの手の悪行は、
卵やハムや牛乳といった消費者に欠かせない食品の分野でも、
次々に実態が明らかになっているから、何を信じたら良いのか。

ほかにスーパーの手口としては、
野菜売り場等にさりげなく置かれている産地名を記載した、
ダンボール箱のビジュアル演出である。
消費者はそのダンボールの産地名から、
山積みされている野菜や果物がそれであるかのように誤解をしてしまうが、
箱と陳列商品はまったく関係のないものがあるという。
つまり、わざと誤解を招くような演出をしかけているというのである。

役者の七変化にビジュアル舞台装置と、
スーパーも本来の業務に加えてなにかと忙しそうであるが、
そんなことを考えるヒマがあったら、
もっと真っ当に消費者にアピールするビジネス戦略を考えた方が、
長期的には売り上げの向上に役立つと思うのだけれど。

テレビ番組を見た後でスーパーに出かけ、
ずっと以前から気になっていたことを質問することにした。

それは〇〇産と明示してあるナスについてであるが、
茹でたりするとすごい色落ちがするのである。
快晴の空の色は気持ちの良いものだが、
それと同じ鮮やかなライトブルーがナスの色落ちの色となると、
こちらはすごく気持ちが悪い。
子供のころ、田舎で自家栽培していたときのナスを茹でたときの色とは、
まったく違うので不思議に思っていた。

スーパーのナスを茹でた後のお湯は、
まるでインクを流し込んだような鮮やかなブルーである。
この年になるまで毎年ナスを茹でているが、はじめて見る色落ちの色だった。
さらに茹で上がったナスの色は、食欲もうせるような茶色に変色している。
その後は〇〇産のナスは買わなくなったが、
先日、他の産地のナスが切れていたので仕方なく買った。

家に帰って茹でたところ、ブルーの色落ちは少し薄くなっていた。
さらに茹でた後のナスは、以前のような汚い茶色ではなく
少しナスの紫の色が残っていた。

(茹でた時間と条件は同じなのに、この差はなぜ?)

わたしは考えた。
同じ包装の同じ産地のナスであることには違いないが、
以前ナスを買った時からかなり時間が経過している。
ひょっとしたらこの間に誰かに色落ちを指摘され、それから改めたのか?

その日、スーパーの野菜売り場で、
売り場の若いオニイサンをつかまえて質問した。

「このおナス、すごく色落ちがして気味が悪いわ。染めてあるのかしら?」
「いやぁー、ナスは色が落ちますよ」

「でもずっと前はすごく濃い色落ちだったのに、この間のはかなり薄かったわ」
「あっ、それは季節によってナスの栄養分が違うからですよ」

「ふーん、そうなの(納得できない)。
 おとといだかスーパーの暴露テレビを見たものだから、
 ちょっと気になってしまって・・・」
「お客さん、それ昨日のテレビですよ。ボクも見ました」
「・・・・(納得いかないけど、今日のところは引き下がろう・・・)」

演技のお勉強よりも、本来の業務をしっかりね、スーパーさん!

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