女子トイレの中はワンダーワールド(その2)

「なーイガラシ(仮名)、女子トイレの中ってどうだったよ」
「トイレットペーパーからからーってやる音とか聞こえてくんのか?やっぱ」
「ちくしょーいいなあ」

 その日の夜、なじみのカクテルバーで催された打ち上げでの風景である。
 ・・・ほんとはさ、大学祭でのライブの打ち上げってさ、最終日にトリを取ったバンドが例年MVPになってさ、ヒーローインタビューよろしく
「いやー、今日のライブよかったよー」
とかってみんなに囲まれてちやほやしてもらえるんだよね。ちなみにあたしが参加してたバンドも大学4年の時にトリを取らせてもらい、ありがたくもこの栄誉にあずかりました←ちょっと自慢(^-^)v
 なんだけど、この年の打ち上げはトリを取ったバンドそっちのけでイガラシ(仮名)がすっかりMVPになってました。トリのバンドの人ちょっとかわいそうかも!?

 んで、あたしとイガラシ(仮名)の会話。
「何、女子トイレの中ってそんなにいいの?」
「いいに決まってるじゃないですかー。いやー俺、女子トイレの中ってどうなってるのかなーってずっと疑問だったんですよ」
「・・・別に普通のトイレと変わんないよ」
「いや、そうですけど、女子トイレの個室って、男子トイレにはないゴミバコがあるじゃないですか」
「ああ、汚物入れね」
「俺、そのゴミバコ見てすっげえドキドキしましたよ」

そこへ別の男子部員乱入。
「で、その汚物入れは開けたのか?イガラシ(仮名)」
「いやぁ、さすがに開けませんよ」
「バカ、なんで開けねぇのよ。もう女子トイレなんて二度と入れないかも知れねえんだぞ?」
「すいません。俺、となりの音の方に夢中で・・・」
「いや確かに音も想像(もうそう、と読むこと)をかきたてるけどよぉ・・」
「そうなんですよ。どんな女の子が隣に入ってるんだろうとかどんなパンツ履いてんだろうとか」
で、気がつくといつの間にやら男子現役部員が全員車座になっていて、ここには書けない話にどんどんエスカレートしていった
。あたしはその場からぽつーんと置いてかれてしまったのだ。でもまあいいか。若い男だけでしたい話ってのもきっとあるもんね。で、となりに座ってた気の置けない同期の男子部員Hにあたしは聞いてみた。
「何、女子トイレの音ってそんなにいいの?」
「当たり前じゃん。なんでこの世に下着ドロが存在すると思ってんのよ。男の想像力をナメちゃだめだって」
それでふっと思い出したことがあった

 ある日の仕事が終わった後に室内を掃除してたら、忘れ物のユニクロの紙袋がひとつたたずんでいて、悪いとは思いながら中を開けて持ち主を特定できる手掛かりを探した。そしたら中から出てきたのはJALの接客マニュアルや関係者専用の空港敷地内出入IDカード、JALの社内内規やびっしり書き込まれたルーズリーフ式ノート。そしてキティちゃんのペンケース−
 それを見たときの男性陣数人のやりとりがまた絶品だったのだ。
同僚A「いやーこのコ、スッチーのタマゴなんでしょうか?」
同僚B「いやぁ。ただの地上勤務なんじゃねえの?」
同僚A「でも、空港内に勤める女の子ですよー。いいじゃないですかー。で、このペンケースからすると年の頃は21、2くらい」
同僚C「そうそう。で、部屋でのふだん着はユニクロなのな」
同僚A「もちろんパジャマもユニクロということで。でもって、この紙袋届けにこのコの家行ったらユニクロのパジャマで出迎えてくれるんですよーきっと」
同僚C「で、”わざわざご親切に寒い中ありがとうございますー。あの、お茶でも飲んで温まって行きませんか?・・・”て上目づかいに言われたりしてな」
同僚A「あ、俺このコのアパート行ってこの紙袋届けに行くっす」
同僚C「いや、俺が行く。」
同僚B「ちょっと待てお前ら。大事なポイントを忘れてるぞ。そのコが一人暮しとは限らないじゃないか」
同僚A「そんなもん一人暮しに決まってるじゃないですかー」
てんでどんどん話がとんでもない方にふくらんでいき、あたしは内心
”おいおい、どうして紙袋ひとつでそこまで「もーそー」をたくましくできるんだあんたらは”
なんて思ったものだった。でもこの日の”女子トイレ事件”でようやくわかった。
 紙袋であれくらい乱れられるのなら、女子トイレの中なんてのは男性にとってはさぞ悩ましい空間だったに違いないのだ。

 で、イガラシ(仮名)。
「いやーナッキーさん、俺、これでいつ死んでももう思い残すことはないっすよ。」
そうなん!?なんて志の低い人生なんだその程度でもう満足して、いつ死んでもいいだなんて(笑)。
 
そんなわけで最後に教訓:
女性のみなさん隣に男性が潜んでいた時に備えて、なるべくトイレの個室内では静かに用を足しましょうね(←?)