えー、解答の前に、月の環境についてこの問題と関係する部分をちょいおさらいしておきましょうか。
まず、月の自転周期は約1ヶ月。従いまして昼は2週間、夜は2週間続く形になります。
次に、言うまでもなく月には大気がありません。ですから当然そのままでは呼吸は出来ませんし、音も伝わりません。
そして、磁場が固定しているので方位磁針は役に立ちません。
また、大気がないので昼と夜の寒暖の差が激しくなります。昼は110℃くらいになりますが、夜は氷点下100℃以下まで下がるそうです。
そして、宇宙飛行士は月面に着陸するとき、必ず朝になったばかりのところを狙って着陸するのだそうです。
ということは、そこから200キロメートル離れたところに不時着して母船まで歩いて来るということは−
絶対にどこかで炎天下の昼の中を歩かなければならないということになります。
で、歩くスピードですが、これは宇宙飛行士だからとはいえ私達と大幅に変わることはありません。
ただ、あの宇宙服を着て歩く以上、多少動きは鈍くなるでしょうから1時間に約3キロメートルを毎日8時間歩くと仮定して−
約10日間歩けば母船にたどり着く計算になります。
従いまして10日間を生き延びるためには何が必要かという話になってくるわけですね・・・・・
え?そういう前提条件を何でもっと早く言ってくれないのかって?
だってあたしがこのクイズやった時も、この部分は解答を作ってから教えられたんだもん。条件は平等に、ね(笑)
というわけで、以下は解説です。
1・・・・・H、100ポンドの酸素ボンベ2個
言うまでもなくこれは命綱。こいつがないと1分たりとも生きていくことができません。というわけで最必需品。
2・・・・・L、5ガロンの水
宇宙食とどっちが優先かなーと迷われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。いちおう、水も食料もどちらも大切なものではあるのですが、
食料がなくても水があれば10日は生きられるのに対して、食物があっても水がないと正気を保っていられるのはせいぜい5日とのことだそうですので、
水の方が優先、です。
3・・・・・I、月から見た星座図
この状況で何よりも避けなければいけないのは、見当違いの方に歩いてしまうことです。これら15のアイテムの中で自分の居場所を知るor自分の居場所を
他人に知らせるためのモノは星座図以外にあと2つ−FM送受信機と発火信号−がありますが、電波や電池などがなくても使えるものと言えば
これでしょうということで、これが3番目。
4・・・・・B、宇宙食(流動食)
やはり”腹が減っては戦はできぬ”ということで。
5・・・・・O、太陽で作動するFMの送受信機
母船から20キロメートルのところまで近づくと使えるそうです。というわけで、まずは月から見た星座図を頼りに歩き、母船に近づいてきたら
FM送受信機を使い、さらに近づいたら発火信号(後述します)、という使い方がここでは一番よろしいかと存じます。
6・・・・・C、ナイロンのロープ15メートル
月には大気がなく、音が伝わらないため、例えば縦に一列になって歩いてて一番後ろの人間が何らかの理由ではぐれてしまっても
気づかないということになりかねません。これを防ぐには、宇宙飛行士全員を腰なり腕なりでロープに結わえ、連なって歩くのが
最善です。
7・・・・・N、注射針の入った救急箱
長い道中、何があるかわかりません。応急処置ぐらいはできるように備えておいた方がよいでしょう。
8・・・・・D、パラシュートの絹布
暑いときの日よけ、または寒いときにくるまるのに役に立ちます。
9・・・・・J、救命いかだ
荷物を運んだり、あるいは急病人が出た時に乗せたりといった形で活躍します。
10・・・・M、発火信号
母船が見えてきたときにこれで相手に知らせます。(管理人註:大気がないのに発火信号が燃えるのかという点につきましては聞きそびれた)
11・・・・F、45口径ピストル2挺
ハンマーのかわりに使えますし、あるいはナイロンのロープに結わえて投げ縄、みたいな感じで重りにもなります(このあたりから
本来の使い方からはかけ離れていきますね)。
12・・・・G、粉乳1ケース
水に溶かして飲んでももちろんいいのですが、それなら水そのものを飲んだ方がよっぽど無駄が少ないです。この場合は自分達のたどって来た
後に粉乳を撒いて万一迷ったときに備える、という使い方のほうがメインです。
ただし、ご承知のように月には大気がなく風が吹かないため、一度まいた粉乳は永久にそのままです。月の環境汚染になっちゃう!?
13・・・・E、ポータブルの暖房機
ここからはもう、その道具がどれだけ役に立つかというよりも、その道具に使われている部品がどれだけ役に立つか、という話
になってしまいますね。というわけで、残りの3つのうちで一番部品が多そうなのがこれ。たくさんある部品の中で何かひとつくらいは役に立つこともありましょう。
14・・・・K、磁石の羅針儀
月では磁場が固定しているため磁石は役に立ちません。これも、磁針の金属部分が何かの役に立つのではないか、ということで。
15・・・・A、マッチの入った箱
何の役にもたちゃしません(笑)。大気がないから燃えないし。
採点
それでは採点方法です。まず前ページの表に、自分で出した順位は”1”のところに、解答の順位は”宇宙飛行士の決定”のところにそれぞれ書き込んでください。
できましたか?それでは自分の順位から解答(宇宙飛行士の決定)の順位を引き算して、その絶対値を”誤差”のところに書き込んでください。
例えば、ナイロンのロープに”10”とつけた人は4、磁石の羅針儀に”5”とつけた人は9、て感じで。従いまして自分の順位と解答の順位が同じくなった人は”0”になります。
書き込み終わった方は”誤差”の数を全部たしてください。
なお、よーく計算するとわかりますが、ここで出てくる数は必ず偶数になるはずです。奇数になったあなたは・・・・・・
それは何かが根本的に間違っているんです(笑)。今一度計算しなおすことをお勧めいたします。
できましたか?
それでは結果発表です。
24点以下・・・・・・きわめて優秀です。今の仕事をやめてNASAに勤めてもあなたなら立派にやっていけるでしょう。
26〜40点・・・・・まあまあ優秀です。もう少し修行を積めば未来の宇宙飛行士候補生かも!?
42〜56点・・・・・もう少し勉強が必要です。でもまあこれが標準的なところかもしれません。
58〜72点・・・・・かなり問題あり。中学校の理科の教科書を今一度おさらいすることをお勧めします。
74点以上・・・・・・宇宙旅行に自由に行ける時代になっても、あなたは月には行かない方がよろしいかと存じます。
シャレですよシャレ。結果が悪くてもあんまり本気になって怒らないでくださいね。
いやーでもこれ、実は職場の研修でやった問題なんですよ。
といってもNASAの宇宙飛行士になるための研修に行って来たわけでは当然なくて(笑)、グループ討議の題材のひとつとして使ったんですよね。
そのときの研修課題は「コンセンサスによる集団決定の実習」ていうタイトルでさ、5人(ないしは6人)一組のグループになって、まずは各人の順位を出して、
その上でグループで1時間前後話し合ってグループとしての結論を出す。その上でグループ全体で出した結論の数字と自分の結論の数字がどれくらい離れているかとか、
グループで出した数字よりいい数字(つまり少ない数字)の人はいるかetcetcによって、その討議がどのくらい能率的なものだったかを数値で表す、みたいな実習内容だったんですね。
・・・・・なんか、自分で書いててよくわかんないや(笑)。こんな実習内容が将来職場で役に立つんかね?でも、実習内容そのものよりも
問題の方が純粋におもしろかったので、今回の更新でみなさんに出題しちゃいました。楽しんでいただけましたでしょうか?
ちなみに実際の研修では
「宇宙人が襲ってきたら大変だからピストルが1番重要だ。」
とか
「酸素ボンベの酸素をぶっ放してロケットの燃料にする。」
とか、挙句の果てには
「粉乳のにおいをかぐと安心するから精神安定剤代わりに持ってく。」
といったいろいろものすごい意見が出てきてなかなかおもしろかったです。
参考までに、あたしは42点でした。みなさんは何点でしたか?