Tears to Tiara

Leaf 製作


最近はすっかりご無沙汰していますが俺はADVやビジュアルノベル以外にSLGも結構好きだったりします。
ゲームレビューのラインナップを見るとADVやノベルばかりやっていますけど。

そこに現れたこの「Tears to Tiara」 なんでもハーフリアルタイム制のシミュレーションRPGだということで、同メーカーのシミュレーションRPGの前作「うたわれるもの」が好きな俺は即購入決定。

なんたって人外キャラ(妖精さん)も出てきますしね!!(注:管理人は人外キャラを愛しています
というわけでTears to Tiaraレビューです。

<ストーリー>

---『青銅の時代』から1200年。

大陸では新たに勃興した『帝国』がその勢力を広げ、
かつての『古代王国』の領域までをも侵食しつつあった。

辺境の1部族、ゲール族の少女リアンノンはそんな中魔王復活の儀式の為帝国司祭によって生贄にされそうになる。
儀式はリアンノンの兄、アルサルによって阻まれたのだが結局魔王”アロウン”は復活してしまうことに・・・

なりゆきでアロウンを族長に戴くことになったゲール族はそれゆえに『帝国』と敵対していくことになる。
アロウンの秘められた過去とは?そして、『帝国』の背後に見え隠れする真の敵とは?
世界を揺るがす戦いが、今、始まる。

オフィシャルサイトより一部引用)




ひとことで言えば漢祭り開催中なお話。
主人公のアロウンはもちろんの事それ以外の男連中もなかなかに魅力的なキャラクター揃いで、彼らが活躍するイベントシーンはまさに圧巻。存分に燃えさせていただきました。

展開的には特にひねったところのない実にオーソドックスなストーリーなのですが、キャラクターの魅力でそれを感じさせないところは流石だと思います。
主要キャラクターが出揃うまでの序盤こそ少々展開が遅いものの、そこから中盤にかけての盛り上がりは本当に素晴らしかったです。


が、しかし。
それ以外でだいぶ粗が目立つ所が有るんですよね。

このゲームにおいてストーリーは完全に一本道であり、ヒロインごとの個別EDなどというものはなく結末は一つ。
なので主人公はヒロイン全員に一回のプレイで同時に手を出すと言うなかなか(ある意味)男らしい行動に走ることになります。
まぁ、これは世界観的に一夫多妻が普通に許されているらしいので別にいいのですが(なんたって主人公は魔王ですし)、そのお陰で一人一人の掘り下げがかなり浅くなってしまっています。
序盤のどうでもいい日常シーンとHシーン以外で女性陣がメインのストーリーにほとんど絡んでこないのは正直恋愛ゲーム、エロゲーとして激しく欠点かと。
死地に向かう主人公に対して「私があなたを守ります」「何処までもついていきます」といった台詞を吐かれても主人公・ヒロイン共にそういう境地に至るまでの描写が全くもって不足しているため、見ているこっちとしては置いてきぼりにされている気分でした。

また中盤にかけての盛り上がりが素晴らしいと上で書きましたが、その勢いをラストまで維持できていないのも気になるところでした。
「真の敵」が明らかになるまではいいもののその後が尻切れトンボと言うか唐突な終わり方です。
ラスボス前の前座だと思っていた奴が実はラスボスだったのがわかった時の失望といったらそれはもう。
あれでは問題の根本的解決がなされていないと思うんですけどね……

<キャラクター>

アロウン

主人公。1200年ぶりによみがえった伝説の魔王。
なりゆきでゲール族の族長に祭り上げられたことから、部族を率いて『帝国』との戦いに身を投じることになる。

まさに「伝説の魔王」然とした超悪人顔なのに気さく、というかお馬鹿な言動とのギャップがたまりません。
「能ある鷹は爪を隠す」と言いますがあれは素なんじゃないか。

何気に登場する女性キャラ全員に手を出すと言う素敵なお方ですが、ゲール族にとっては偉大な族長、他の人間達にとっては伝説の魔王、妖精族にとっては種族を救った英雄なのでそんな事をしても全然無問題
……道具屋の店員の妖精さんにまで手を出したのを見たときは少々引きましたが。

アルサル

ゲール族一の戦士にしてリアンノンの兄。アロウンの第一の部下として時には反発し、時には手を取り合い共に戦う。
主人公よりよっぽど主人公らしい見かけと言動の直情径行型シスコンお兄さん。

アロウンと共に強力なストーリーのけん引役として漢祭りに大貢献
この人とアロウンの時を越えた友情はある意味このお話のテーマだと思います。
序盤こそ頼りないものの中盤以降は漢を見せてくれます。

…しかし、男性キャラがここまでストーリーの前面に出てくるってエロゲーとして何か間違ってるよなぁ。


以下ヒロインたち。紹介の力の入れ方が違うのは仕様です。

リアンノン

ゲール族の託宣の巫女。アロウン復活の儀式のための生贄としてささげられそうになっていたところを救われ、アロウンと行動を共にしていくことに。(一応)アロウンの正妻。

いきなり出会った直後に「私、アロウン様のお嫁さんになります!!」とか言い出したのを見たときはこいつ頭大丈夫かと真剣に心配してしまいました。
一応アロウンの正妻でメインヒロインのはずなんですが他の人たちに割を食われてあまり印象に残らない人でした。

アロウン、アルサルが事情により戦えない際に部族を率いて主人公の居城の防衛戦の指揮を行なうくだりは最高に燃えましたがメインヒロインなのにそんなところが一番印象に残っている辺りで推して知るべしって事ですね。
もっと主人公と絡んでよ。

その他アロウンの妻達

リアンノンの他にもゲール族の女戦士モルガン、『帝国』の女騎士オクタヴィア等のアロウンの妻達(側室扱い?)が居ますが更に輪をかけて登場シーンが少ないため語りようがないです。

2人でひとつの項目にされたりしているところからも察してくださいな。
日常シーンで出しづらいというのなら戦闘時に主人公と共闘するところを入れるとかいくらでもやりようはあると思うんですけどね……
一応正妻ではないとはいえ主人公の妻達の一人なのに、単なる家付き妖精(召使い)のリムリスやエルミンより出番が少なく感じられるってのはどういうことよ。

妖精さんたち

上記の人間のヒロイン以外に、家付き妖精(要はお手伝いさんです)のリムリスエルミン、武器屋を営む鉱山妖精のラスティ、道具屋の店員のエポナ、主人公に仕えるアザラシ妖精のスィールといった数多くの妖精族が登場し、一部(ラスティ・スィール)は戦闘にも参加します。

主人公は妖精族にとっては1200年前の戦争で自分達を救ってくれた英雄なので全員初対面から好感度MAXです。さすがは魔王さま。

そして上でも書きましたがリムリスとエルミンとスィールがやたら優遇されすぎ。
特にリムリスは序盤の主人公の居城でのイベントシーンで他のヒロイン達を差し置いてあまりに登場しまくるので実はストーリー的に何か鍵を握る重要なキャラクターかと思ってしまいましたよ。全然そんなことはなかったですけど。
何か個人的思い入れでもあるのですかね?

それと、これは全くの個人的感想なので申し訳ないのですが妖精族などといいつつ人間と姿かたち・生態ともにほとんど変わらないのは人外キャラ好きとしては気に入らなかったですね。
何かしら人間と異なるところがあってこその人外キャラだと思うんですよ!!(←しつこいから)

<グラフィック・音楽>

CG枚数は92枚(差分含まず) 陰影のはっきりした塗りのアニメ調のグラフィックです。
立ち絵はかなり安定していて綺麗なんですが、イベントCGの品質にかなりのばらつきがあるのが少々気になりました。
とても同じ人が描いているとは思えないぐらいの違いです。あまりにばらつきが激しいので最初複数原画家が居るのかと思いましたよ。


音楽は30曲(うちVo曲3曲)
どれも単体でかなり出来が良い上に、実に的確なタイミングで挿入されるため更に効果がアップしていました。
こればかりは手放しで褒めていいところだと思います。
OP曲の男性Vo&英詞バージョンの「Tears to Tiara 〜凱歌〜」が特にお気に入りですね。

男性陣も含めてフルボイスなのは漢祭りなお話の内容からすると非常に良し。
特に主人公アロウン役の声優さんの物凄い熱演は燃えシーンに花を添えていました。女性陣より印象に残るよあれ。
アルサルの声がいまいちですが他の男性陣もなかなか熱演しており、男キャラに声が付いていることに感謝したくなってくるゲームでした。

<システム>

DVD一枚でインストール容量は2GB。ディスクレスプレイ可。
特定のポイント(拠点での行動選択画面、ワールドマップ、戦闘直前、戦闘直後)でのみセーブ可能で、セーブ箇所は100箇所。

文字速度を「普通」にしていても一般的な文字瞬間表示クラスの速さで表示される割に、それこそ頑張れば読めてしまうくらい遅いテキストスキップがプレイしていてちょっと気になりました。
戦闘シーンで負けてやり直しをする際戦闘直前の会話シーンをもう一度見なければならなくなるため、そこを飛ばすためにもテキストスキップはもう少し早い方が良かったかと。


戦闘シーンはリアルタイムで進行するシミュレーション。
AIで行動するキャラの移動ルートや攻撃ターゲットを決めたりしてなかなか忙しいです。

戦闘用のマップが狭い上に障害物を利用するといった戦術がほぼ不可能なため、全員で団子になって移動し前衛キャラが敵に当たっている後ろで後衛キャラが弓を撃ったり魔法を唱えたりというのが毎回のパターンになります。
囲まれているところからスタートするか、待ち構えている敵にこちらから向かっていくかで多少の違いはあるものの戦闘の展開は毎回ほぼ同じ。
一応キャラの向きによる被ダメージの差なども設定されているのですが、レベルの差を戦術で覆すといったことは難しいかと個人的には思いました。
まぁ、これは俺が最初の戦闘で全滅したヌルゲーマーなせいもあるかもしれませんけどね。

良く言えばレベルを上げて装備さえ整えて置けば力押しで何とかなる(というか力押し以外にプレイの選択肢が無い)のでシミュレーションが苦手だという人も安心かも。
メインキャラ以外にも傭兵として戦闘シーンに出撃するキャラを雇って育成したりもできます。これは高難易度でのプレイの際必須だそうです。

<総括>

実に王道的展開のオーソドックスなお話をキャラの魅力で押し切った作品。
難しいことは考えずに単純に燃えられます。

が、これPC18禁である必要は存在するのかな、というのも率直な感想ですね。
Hシーンのテキストは死ぬほどやる気が無い上に尺も短いし、そもそも女性陣がメインのストーリーに全くといっていいほど絡んできません。
主人公とヒロイン達との絡みが基本的にお寒い日常シーンと唐突なHシーンしかないので結びつきが全然感じられないのはどうしたもんかなぁ、と。
男性キャラたちの素晴らしいまでの燃えっぷりはある意味ではそれを補って余りあるものがありますけど。

エロゲーor恋愛ゲームとしてではなく、ちょっと女の子の登場人物の多いコンシューマーのシミュレーションRPG(難易度低め)だと思ってやると十分満足できる出来なのではないかと思いました。