Quartett!

Littlewitch 製作


それが純愛&萌え系だろうが、鬼畜&陵辱系だろうがなんだろうがエロゲーの表現形式の基本フォーマットは「キャラクター立ち絵+背景+テキストウィンドウに文章表示」であることは間違いないでしょう。


そんな世の風潮に反しFFD(フローティングフレームディレクター)という独自システムによる画期的な演出を売りにしたこの「Quartett!」

すでに同メーカーの前作「白詰草話」でFFDシステムによる画期的な演出に魅せられた俺はFFDを採用しているだけで買い決定。
「白詰」のときはいまいちだったシナリオ(詳しくは偏遊記の記事でどうぞ)もライターが代わったので期待大。



で、結果はどうだったかって?

そんなわけで「Qualtett!」レビューです。

<ストーリー>

マグノリア音楽院。

長い歴史を誇る音楽の名門校であるこの学院に、主人公 フィル・ユンハースはそのヴァイオリンの腕を買われスカウトされ、欠員の出たカルテット(ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロで構成される弦楽4重奏楽団)に加わることになる。


かつての神童「シャルロット・フランシア」
陽気なムードメーカー「ユニ・アルジャーノ」
物静かでミステリアスな「李 淑花(リ・スウファ)」

曲者ぞろいのカルテットメンバーと、時にはぶつかり合い、悩みながらも音楽に打ち込む主人公。

目指すは若き音楽家の登竜門「マグノリア・カルテット・コンクール」への出場。

コンクールまであと84日。ばらばらな彼らは果たして一つにまとまることが出来るのか───








とまあこんな感じで。
「音楽学校を舞台にした青春物語」という形容がぴったりです。

話の展開的にはこういった芸術系の物語にありがちな「挫折とその克服」「コンプレックスの解消」といったノリで進むのですが、あまりそれが鼻につくことはなかったです。
演出とあいまってテンポのいい日常会話シーンがそう感じさせるのではないでしょうか。ギャグも冴えてますし。


惜しむらくは少々ボリューム不足なところ。なんというか、一つ一つのシーンが短くやけに場面転換が多く感じますね。
おかげで「下手だった演奏がだんだんうまくなっていって・・・」というのがあまり感じられず、やけにあっさりとコンクールの出場権を得たように感じられるのですよ。他にももう少し掘り下げてほしかったな、と思える部分が少々。
それらが何とかなればさらに評価は上がったのですけどね・・・


しかしそういった欠点はあるとしても、「音楽を通じてつながった仲間たちと過ごしたかけがえのない学生時代」は十分に描けているかと。

個人的にこういう「みんなで何かひとつのことをやり遂げる」系の話が大好きなので俺は結構満足できました。




あと、相変わらずの地の文なしの台詞だけで進行するテキストもよかったです。
状況説明はそれ用のコマ絵でやりますからね。無駄な描写がなくてシンプル。



なのに、どうしてHシーンだけ文章が普通のノベル形式になっちゃうのかなぁ?
それまで地の文なしで進んできたのにいきなり地の文が出現するので初めて見たときは違和感が凄かったです。

まぁ、とくに”使える”と言うわけでもないので地の文があろうがなかろうが別に良いんですけどね。

<キャラクター>

フィル・ユンハース

主人公。正規の音楽教育を受けたことがないためクラシックの知識には乏しいが、幼少から親しんできたヴァイオリンの演奏は明るく自由で人をひきつける魅力を持つ。カルテットでは第二ヴァイオリンを担当する。

まさにラブコメ主人公にふさわしい3枚目。無意味にポジティブ、常に明るくうじうじ悩むことなんてなし。
もっとこいつのボケを見てみたかったです。そういった点でもこの話の短さは惜しいですね。

あまりの考え無しっぷりにちょっと引くところもありますが、それが祟ってどうこうと言う展開はないので暖かく見守ってやる(笑)のが良いでしょう。





以下ヒロインズ。

シャルロット・フランシア

愛称シャル。カルテットの第一ヴァイオリン担当でリーダー的存在。
幼少から英才教育を受けており、「神童」と称えられていたが・・・

身長136cmのロリな外見にして中身は口うるさい先輩。最高です。

いやあ、見た目ロリ中身もロリなんてのよりこういうギャップのある人のほうが萌えますね。

シャルシナリオのコンクール本番の演奏は本気で鳥肌ものです。
俺は数ある演奏シーンの中でもあれが一番好きですね。

あと、kleine Madchen(ドイツ語で”小さい女の子”)と書いて”シャルロット”とルビをふっているのは笑えました。

ユニ・アルジャーノ

カルテットのヴィオラ担当。
とぼけた発言で周りを煙に巻く不思議ちゃん。
幼いころはヴァイオリンを弾いていたのですが、あるきっかけからヴィオラに転向したことにひそかなコンプレックスあり。

最初のHシーンが酔った勢い(ユニが)というのがこの人を体現してる気がします(笑)

ユニシナリオではユニの双子の妹メイが非常にいい味出してます。
と言うかむしろメイを攻略させ(略

李 淑花(リ・スウファ)

カルテットのチェロ担当。
街の有力者である華僑の一人娘と言う家庭環境から他人との間に一線を引いたような感じありな眼鏡っ娘。

巨乳+メガネな癒し系かと思えばそれだけでは終わらないわけでして。なかなかに重い事情持ち。
音楽とか、コンクールとかあんまり関係なくなってくるスウファシナリオの黒さはちょっとびっくり。
やけにバイオレンスですし。

あと、序盤で「男嫌い」なんて言われてましたが全然そんな風に見えません。無口なだけで主人公と普通に話してますし。
こういうところでシナリオのボリューム不足を実感しますね・・・

ここまでがメインの人たち。
と言うわけで次はサブキャラ中印象に残った人達です。

シニーナ・ビノテーク

主人公たちとその腕を競いあうライバルカルテットのヴィオラ担当。カフェで働きながら音楽院に通う苦学生。

仁義に厚く姉御肌なシニーナ姐さん最高。
うだうだ悩んでばかりのヒロイン三人よりこの人のほうが好きです。でも一番はメ(略

メイ・アルジャーノ

ライバルカルテットの第一ヴァイオリン担当。
ユニ・アルジャーノの双子の妹。ユニに近づく男が大嫌い。


いや、だからメイを攻略させ(略

とりあえず全キャラ中一番好きです。
ユニ&シャルシナリオ終盤での活躍が素敵過ぎでした。

「いいか?わたしはメイ・アルジャーノだぜ?
 この程度のチャンスこの先いくらでも転がってるわ!」
 のシーンとか特に。


あと、ユニシナリオエンディングのあれはファンディスクなどでユニ&メイの姉妹丼が見られるものと解釈していいんですよねLittlewitchさん?
本気で期待してます。

<グラフィック・音楽>

グラフィックは非常に特徴ある水彩画のような塗りと手足が長く等身の高いキャラクターでかなり独特です。
FFDシステムによって、「コマ絵+フキダシ」という風に進むので立ち絵などなく全編イベントCGといった感じ。

この絵柄は好みが分かれそうですね・・・ 俺は大好きですけど。



音楽は最高。

わざわざこのゲームのために現実のカルテットを2つ動員して録音した弦楽曲たちはエロゲーの曲とは思えぬ素晴らしさ。
実際に音楽をやっている人からすれば文句のつけようもあるのかもしれませんが、俺程度の耳では何も言えないです。

弦楽曲以外の普通の曲たちも、少し印象は薄いですがそれでもなかなかの出来。
このゲームの売りの一つのことだけはありますね。

序盤の素人目にもへたくそな演奏から終盤の見事な演奏へとちゃんと腕前を上げさせたりと妙なところで凝ってるのは感心しましたね。

<システム>

いつも書くことがあまりなくて困るこの項ですが、今回は違います。

音楽とともにこのゲームの売りであるFFD(フローティングフレームディレクター)システム。
コマ絵が次々と表示され、台詞はフキダシで表示されるこのシステムはわかりやすく言うならマンガのコマが動いているといった感じです。

おかげで動きのある演出が多用できてそれが映えること映えること。
特に演奏シーンはいくら音楽が良かったとしても文章が普通のテキストウィンドウタイプだったら魅力半減だと思います。


個人的にこのシステムは大好きです。
正直言って買った理由の7割くらいはFFDシステムを採用しているからですし。


セーブ、ロード、スキップ等は標準レベル。
話自体がたいした長さでないのであれでまったく問題はないでしょう。FFDのコマ表示の速さも1倍速から16倍速(強制スキップ)まで選べます。

俺としては演出と音楽のタイミングがぴったり合うので1倍速進行がお勧めです。

ちょっと気になったところとしては、音楽再生モードにおいてゲームをバックグラウンドで動作させていると一曲リピートが利かないところですね。
全曲リピートはできるんですけど。

<総括>

確かにストーリーだけを追うとだいぶ薄いシナリオかもしれませんが、演出・音楽の良さはそれを補って余りあるのではないかと。

ある意味ここが評価の分かれ目ですね。話の内容のみを求める人にはかなり物足りない物が残るでしょう。
ここは一倍速進行でゆっくり演出や音楽を楽しみながらプレイするのが吉。


俺はFFDシステム&大槍絵がかなり好きなので評価にだいぶ補正が入っていますが、それを差し引いてもそれなりの良作と言って過言ではないと思います。
本当もう少しだけで良いからシナリオに力入れてくれれば手放しで絶賛できるのになぁ・・・