Littlewitch 製作
エロゲーの舞台設定というのは、たいがいにおいて「ありそうでない」状況を描いたものです。
それはやたらと女の子にモテまくる学園生活だったり、自分に好意を抱く義理の妹なんてけったいなものがいる家庭環境であったり。
これはこれで十分ありえないかもしれませんが、少なくとも自分が遺伝子工学者だとか、公安と軍の争いに巻き込まれるとかいうのはそうそうないでしょう。
これはそのなかなかない状況なお話、白詰草話のレビューです。
こういう話は書き手の技量が高ければ下手な学園ラブコメなんかよりも数倍面白いわけでして。
俺が個人的に好みだというのもありますけどね。
では、中身のほどはどうだったのでしょうか?
あ、言っておきますが俺このゲームフルコンプしてません。
理由はレビュー読めばわかるはず。
西暦2008年、東京。
各界から最高レベルの人材を集め、超法規的研究を行う謎に包まれた研究機関 『古痕』
その優秀さからまるで”初めから全て答えを知っているよう”と評される主人公 津名川 宗慈はそこで働く遺伝子工学者である。
彼の研究対象は、戦闘用人造生命体 ”エクストラ” すなわち人間に24番目の染色体を追加し、身体能力を飛躍的に高めた少女達。
エマ、透花、沙友と名づけられた彼女達を研究し、プライベートでは彼女達の父親のように振舞う。
そんな穏やかな日常は、謎の武装ロボットによる『古痕』襲撃によって唐突に終わることとなる。
”エクストラ”をめぐり暗躍する軍部と公安。
主人公をライバル視するもう一人のエクストラ研究者の高宮 エレン。
交錯する人々の思い、明かされる過去、『古痕』の正体、そして『古痕』創設時からの秘密計画「B計画」。
儚くも美しい人造の少女達とともに主人公は何を見るのか・・・
とまぁこんな感じで。
ちなみにプレイ時間30分〜15分程度を1話として毎回アニメーションによるオープニング、エンディングが流れます。
このオープニングが物凄くかっこいいんですよ。
サビの部分で透花が回し蹴りで歩行戦車を撃破してたり、エマがミサイルの弾幕をビルから飛び降りて避けてたり、沙友が飛び込み前転から射撃してたり。
”エクストラ”の高い戦闘能力を端的に表しているのがこのオープニングでしょう。
あ、本編とオープニングで絵が違いすぎというツッコミはなしの方向で。
また、このゲームはFFD(フローティングフレームディレクター)システムというのを採用しており、それによる演出は
素晴らしいの一言。
文章で説明するのはなかなか難しいのですが、要するに漫画のコマとフキダシが次々に画面に現れる感じといえばいいでしょうか?
「キャラクター立ち絵+背景グラフィック」というエロゲーの一般的なフォーマットの制約から解き放たれた画面表現を初めて
目にしたときはかなりの衝撃でした。
オート進行でこれのゲームの戦闘シーンを見ると鳥肌モノです。
テキストもなかなか。前述のFFDシステムにより「状況説明のコマ」が挿入されるため、文章は人物の台詞と心情描写のみで構成されて
いるのですが、そのせいで簡潔にまとめられた文章は好感が持てました。
文章のレベル自体も高かったです。
さて、ここまで読んできて「あれ、ストーリーの内容について一言も触れてないぞ?」と疑問を持った貴方は正しいです。
内容ですって?一言で言えば、
後半失速しすぎ。
最初はよかったのですが、後半に行くにつれて
主人公は無意味にエロいし、オカルト入ってくるし、伏線全然消化できてないし、
○○(伏字)さん死んじゃうのなんてあまりにもお決まりだし、OPムービーで出てきたような格好いい戦闘シーンなんてないし、
もうダメダメ。
俺はエマシナリオと沙友シナリオをクリアしましたが、2周したところであまりにもエンディングがやる気ないのにあきれてプレイを放棄しました。
話では透花シナリオのほかにハーレムシナリオがあるらしいですが。
風の噂では、開発資金不足で後半をろくに作れなかったという話も聞きますがそれでもあれはあんまりです。
なんていうか高級食材を使いながら調理に失敗してしまった、という感じでしょうか。
主人公。超優秀な遺伝子工学者、らしい。恐らく真性ロリ。
そうでなければ見た目小○校中〜高学年くらいのエクストラの少女達を何の葛藤もなく抱けないでしょう。
自分はあの子達の父親のような真似をしているがそれは偽善ではないか、なんて自問自答するシーンがありますが、
大丈夫、普通の父親は娘にそんなことしないって。
以下ヒロインズ。
人造生命体”エクストラ”の少女。
金髪碧眼、ゴージャスなもの大好きなお嬢様。心臓に爆弾を抱えているらしいですが本編中でその設定はろくに生かされませんでした。
メーカーOHPのキャラクター紹介でこの人が猫耳を装着したグラフィックで載っていたため
俺「人外キャラキタ───(゜∀゜)───!!
猫の遺伝子を導入した事によって猫耳ついちゃったって設定だろきっと」
とプレイ前から激しく劣情を催していたのですが、やってみたらブティックでもらった猫耳付けてるだけでがっかり。
人造生命体”エクストラ”の少女。
大人びた容貌と物腰でエマと沙友のお姉さん的存在。
主人公の事を「ご主人様」と呼び慕う。
すいません透花シナリオクリアしていないのでこれ以上はちょっと・・・。
人造生命体"エクストラ”の少女。天真爛漫、天然系の少女。
脳にかなり手が入っており、舌足らずな幼い話し方をする。
クレヨンで絵日記書いていたりとその普段の行動は幼児そのもの。
ていうか日本語出来てません。
しょっちゅう発する「えぁは」はエロゲーキャラの妙な口癖(某「うぐぅ」とか)中でもかなり凄い部類に入るのではないかと。
発音できねぇし。
あとこの人、異常に目がよくて昼間でも星が見えるそうです。坂○三郎かお前は。
ヒロインじゃないんだけど。
若くして『古痕』の情報部長を務める才媛。
以前主人公と交際していたが現在はなんとなく距離を置いている。
薄幸のお姉さん。とりあえず主人公と別れたのは正解だと思います。
『古痕』兵器開発部部長。
レズで幼女好き。特に透花がお気に入り。
この人の開発した兵器で縦横無尽に戦うエクストラたちが見てみたかったなぁ・・・
グラフィックは独特の水彩画のような絵柄でかなり人を選ぶのではないかと思われます。
俺は非常に好みですが。
本編の絵がそういったものなのにOPムービーが普通のアニメ絵なのはかなり違和感がありますね。
あと、エクストラたちのファッションにかなり気合が入っているように感じられました。
シーンごとに毎回凝った違う服を着てますからね。
これはFFDシステムにより「立ち絵」の呪縛から逃れた事によるメリットの一つではないでしょうか?
音楽はかなりいいです。思わずサントラを衝動買いしてしまったほど。
各話OP、EDのボーカル曲、タイトルバックの曲が特にお気に入りです。
はっきり言って使いづらいです。
バックログなし、ロードは指定された一定のポイントからしか不可(ポイント間でのセーブは全てその直前のロードポイントから再開)
というのはあんまりだと思います。
当然スキップも未読判定なし。
しかし、設定画面やセーブ&ロード画面、メニューなどのユーザーインターフェースは非常に凝っています。
アイコン等であれほどセンスあるメニューはそうそうないでしょう。見た目だけならかなり良かったです。使いやすいかどうかは別として。
癖はあるがいい絵、文句なしにレベルの高い音楽、それなりのテキスト、そしてFFDシステムによる画期的な演出という好条件に恵まれながらも
シナリオの出来が全てをぶち壊しにしてしまいました。
結局のところこのゲームはまずFFDシステムありのものであり、全てはそのつけたしであると。
そう解釈せざるを得ません。
既存のエロゲーのフォーマットを打ち破ったという点では評価できますが、ある意味ではそれだけです。
俺はこのFFDシステムによる画面表現が非常に気に入ったのでこのメーカーの次回作以降でシナリオの改善が図られることを祈るばかりです。
あれでそれなりのレベルのシナリオがつけば鬼に金棒ですよ。