火星地球化計画

竹内 薫著
(入門書としては最適です)


タイトルだけを見ると火星のテラフォーミング(惑星を人類の住める星にする改造のこと)について専門に扱った本のようですが、実はそうではありません。
実際の内容は火星の地形、気候、軌道といった「火星そのもの」についての解説から、今までの火星探査の歴史、そして火星探査に使われている(そしてこれから先使われるかもしれない)宇宙開発技術の解説、火星以外への人類の宇宙移民(いわゆる『スペースコロニー』です)の解説まで幅広く網羅しています。

タイトルの通り火星への殖民について扱っているのは全6章のうちの後半2章のみ。
そのため、火星のテラフォーミングについての詳細な記事を期待して読むと期待はずれかもしれません。
また、上述のように対象としている範囲がかなり広範にわたるため、個々の事柄についての取り上げ方がどうしても浅くなってしまっているのは否めません。
具体的な内容まで掘り下げず、概略を取り上げるだけで終わっている箇所が多々あります。

しかしこれは俺がある程度宇宙開発についての知識を持っているからこう思えるわけで、全く何の知識もない初学者の入門書としてはかなり良い部類に入るのではないかと。
上で書いたように具体的な内容まで詳しく述べていないため、得てしてそういった文章が陥りがちな専門用語の乱発といった事態に陥らず非常に平易で読みやすい記述です。
図版や写真が多いのもいいですね。

火星の探査と開発について0から学ぼうという人にはぴったりの入門書なのではないかと思いました。

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