宇宙観光がビジネスになる日

G・ハリー・スタイン著
(宇宙開発に興味があれば読むべき)

再使用型単段式宇宙往還機(SSTO)、つまりは何も切り離さないで身一つで軌道まで到達できる
宇宙機によって宇宙観光や軌道への輸送が大きなビジネス市場を生み出すとこの本の著者は
説きます。
SSTOの技術的可能性(現在の技術で十分可能なのだそうです)についても平易な解説があり
なかなか分かりやすいです。
年に数回しか打ち上げられないようなスペースシャトルは宇宙往還機とはとても言えず、
あれは実験機を定期運行しているようなものだ、などという著者の意見を読んでいる時に
あのコロンビア号の空中分解が起こりなかなか複雑な気分でした。
またSSTOの開発計画をめぐってNASA、米空軍、ホワイトハウス、米議会などで暗躍する数々の
人々や計画を阻止しようと張り巡らされるさまざまな陰謀を描いた部分も技術的に可能だからと
言ってすぐに実現するものではなく、むしろそういった政治的プロセスの方が重要だという事を
教えてくれます。
散々計画をつぶそうとした挙句SSTO実験機の飛行が成功すると今度はSSTO開発計画を自らの
物にしようと動くNASAにはちょっと幻滅しました。
ロマンだけでは宇宙には行けませんね。
後、この本のいまいちなところは「世界の宇宙開発はアメリカがリードするべきなのだ!!」といった
ナショナリズムが「マーズ・ダイレクト」同様に見え隠れするところですね。
アメリカ人ではない俺にとってこういった部分はちょっと理解しがたいものがありました。

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