東大落城

佐々淳行著
(リアルタイムで学園紛争を経験した事のない俺みたいな若造にはお勧め)

東大全共闘の安田講堂篭城。
これを読むまで俺にとっては歴史の一コマ、全く実感のわかないことだった。
この本は篭城の学生排除に出動した機動隊のトップ(警備第一課長)の回顧録である。
描かれる学園紛争の様子に本当に面食らった。
投石や火炎瓶に留まらず、ガソリンを流して火をつける、硫酸の瓶を機動隊員に投げつける、
十数キロもあるような敷石を建物から下の人目掛けて投げ下ろす、道を走っていたバスを強奪して
横倒しにし、即席のバリケードにする。
殺す気満々。
まるで政情不安の国の暴動のニュースなんかそのまま。日本にもこんな時代が存在したという当たり前の
ことを全然知らなかった事を反省した。
暴動に対する著者も著者である。
良くも悪くも警察官(軍人といってもいいかもしれない)的な人物で「ヘルメットをかぶらないで現場に出るのが
男の美学」とか普通に書いちゃうような人なのだが、この人にかかると紛争からイデオロギー的な色彩が
すっぽり抜け落ちてしまう。いかに損害を少なく鎮圧するか、それだけが全てであり、なぜこのような紛争が
起こっているかなどと深く考え込む事はない(そうでもしないとやってられないだろうという気もするが)
くだくだとイデオロギー的なことについて語りがちな全共闘側の本とは大違いだった。

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