海上護衛戦

大井 篤著
(日本の海上輸送に頼りきりっぷりを実感)

海上護衛戦、それは日本本土へと資源を運び込む輸送船団たちの護衛作戦の総称です。
著者の大井篤氏は太平洋戦争中海上護衛総司令部で参謀として勤務していた人物であり、日本の船団護衛を戦争の 広範囲おいて取り仕切る立場にいたため、内部にいたものならではの生々しい現実が描写されています。

とにかく護衛を行おうにも護衛艦の数は少なく、それら護衛艦に配属される兵員達も2線級のものばかり、そもそも 船団護衛をどのように行うかという方法論すらろくに確立していない状態で増大する船舶被害に必死で対応していく 姿は読んでいてかなり悲しいものがありました。

護衛要求の方も全体の戦略を調整する部署がないため無茶苦茶で何を最優先で行うかの確固とした方針などどこにもない始末。

海上護衛総司令部の立場も弱く、こつこつと育て上げてきた対潜哨戒飛行隊を連合艦隊に電話一本で借り受けられて一日で 壊滅させられたり、ぎりぎり護衛任務を行える月7000トンの重油配給を受けていたのが大和の沖縄特攻のためにそれを 3000トンに減らされてしまったり(もちろんこれではまともな船団護衛は不可能です)。

そりゃ戦争にも負けるわな、と読んでいて思いました。

また終戦直前の機雷封鎖と輸送船団の損害による国内の食糧事情悪化の様子は本当に洒落になりません。
もし本土決戦を行った場合・・・という予想をさんざん今まで見てきましたが、軍事的にどうこう言う以前にここまで 国内経済が当時弱体化していたということは驚きでした。

今まで抱いていたイメージでは悪いながらも何とかなるくらいだと思っていたのですがね・・・

偏読記に戻る