細菌戦の世紀

トム・マンゴールド、ジェフ・ゴールドバーグ著
(南アフリカの生物戦についての記述は驚きでした)

生物兵器、それは”貧者の核兵器”とも呼ばれ大規模な設備無しに(比較的)簡単に開発できる大量破壊兵器です。
この本は、生物兵器というもの自体の沿革と、1990年代における世界の生物兵器の状況について書かれた本です。

そのうち約半分は、冷戦期のアメリカとソ連の生物兵器軍拡競争と、1969年のアメリカの生物兵器廃止宣言と1970年の 生物兵器禁止条約締結後の生物兵器軍縮の歩みで占められています。
ソ連(ロシア)が、条約締結後も生物兵器の保有&開発を続けたことに対し条約加盟国から査察を加えられたりするのですが、 そこでの査察団とソ連科学者の騙し合い、そしてソ連の外交戦術のくだりはなかなか興味深かったです。

また、生物兵器というとそうそう現実に使われるものではないという認識を持っていましたが、南アフリカにおける全面生物戦の記事には 正直戦慄しました。
南アフリカ軍部と情報機関がローデシア等で対ゲリラ戦などにおいて大規模に生物兵器を使用しているのです。
水源の汚染から重要人物の暗殺まで何でもありですからね。
エボラ出血熱すら利用したというのはかなり驚きでした。

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