高橋 慶史著
(末期戦とはなんと物悲しいものか)
”カンプフグルッペ”、日本語では”戦闘団”と訳されるこの耳慣れない単語は、第2次世界大戦末期の
ドイツ軍機甲部隊において、数多く存在した臨時編成部隊を指します。
その構成は、ひどい時はその辺りにいた戦える部隊全てを適当にかき集めたという感じ、
まともな時でも大体定数割れ。まぁこれは末期ドイツ軍全てに言えることでしょうが。
この本は、そんな数多く編成され多くは戦場の露となって消えていった戦闘団たちの戦闘を追ったものです。
ドイツ軍のほかにも、イタリア、ルーマニア、ブルガリアといった枢軸側同盟国の末期戦の様子を追った章もあります。
こちらも極貧過ぎて読んでいて悲しくなってきます。
師団本来の戦車は3両しか保有していないのに戦車師団を名乗るSS第9戦車師団、前線の40km後方を
ティーガーI一両で彷徨い、挙句の果てにはシャーマン120両と遭遇して3両撃破し無傷で逃げおおせた
戦闘団”シュルツェ”、乗る船がなくなってしまった水兵達で構成される海軍歩兵師団などもうこれだけでお腹
一杯です。
こういった部隊を指揮する人もすごく、第2海軍歩兵師団の指揮官ヴェルナー・グラーフ・フォン・バーセヴィッツ
=レフェツォウ大佐は1944年8月に1個連隊でソ連軍12個狙撃師団の攻撃を防いだ功績で騎士十字章を
授与されいるなんてのを読むともう冗談にしか思えません。
これ以外にもむやみやたらと指揮官だけ有能で部隊は極貧という例がしょっちゅう出てきます。
また、1945年4月6日、カールスハーフェンにおいて、ティーガーU、3号戦車N型、パンターG型3両で、
16両のアメリカ戦車を撃破した戦闘について詳しく紹介したのはおそらくこの本が世界で初めてだそうです。
どの戦闘も(特にドイツ軍装甲部隊は)強力な兵器を持っていながらもあまりに少数であるか、補給が不足している
とかで連合軍に大損害を与えつつも結局は押し切られて負け、というのが常です。
俺はこういった話が好きなのでなかなか興味深かったです。