雪中の奇跡

梅本 弘著
(フィンランド軍のあまりの極貧ぶりに涙)

1939年11月30日、ソ連空軍の爆撃機がフィンランドの首都ヘルシンキ、そしてフィンランド第二の工業都市 ヴィープリを爆撃。
これがその後105日間にわたる通称タルビ・ソタ(冬戦争)と呼ばれるフィンランドとソ連の戦争の始まりでした。

日本ではほとんど知られていないこの戦争、俺もこれを読むまでほとんど何も知らなかったのですが、 読んでみるとフィンランド軍のあまりの極貧さに涙が出てきます。
まず人口からして違いすぎです。この時のフィンランドの総人口370万人、ソ連の総人口1億7000万人。
ソ連の人口の年間自然増加がちょうど370万人。
とんでもないですね。

工業力、資源なども桁違いです。それがなぜ105日間も耐え、国境周辺の地帯を割譲するだけで停戦に 持ち込む事が出来たのか。
それはひとえにフィンランドとソ連の国境地帯が、道路以外はほぼ通行不可能な森を沼に覆われた地形で あったからでした。
ソ連がどれほど大兵力を投入しようとそれは道に沿って長く伸びてしまい、森の中を自由自在に行動する フィンランドのスキー部隊に兵站を滅茶苦茶にされて次第に弱っていきます。
未完成ながらも国境地帯の要塞線マンネルへイムラインも役に立ったようです。

まぁそれでも最後は地力の差で押し切られてしまうのですが。

ちなみに、表題の「雪中の奇跡」とは1940年1月6〜7日に行なわれたソ連第44機械化狙撃師団& 第163狙撃師団に対するフィンランド軍の総攻撃において、兵力数3倍の敵と戦って10倍の損害を 与えた事に対するアメリカ人ジャーナリストの命名です。(ソ連側は総兵力の70パーセントの損害)
あと、第二次世界大戦のソ連戦車といったらT-34、KV-1、JS-2などが有名ですが、この戦争においては T-26、T-35、T-100、SMKといった聞いたことも無いような戦車ばっかり出てきます。
しかもT-26以外は後に廃れていった多砲塔戦車。そんなのにすら苦戦する極貧フィンランド軍は悲しいです。

日本ではほとんど知られていないこの戦争、一度この本を手にとって学んでみてはどうでしょうか?

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