鉄砲と日本人

鈴木眞哉著
(日本史好きなら読んどけ)

一般に流布しているイメージでは、長篠の戦いと言うのは(あえて誇張して言えば) 「押し寄せる数百騎の武田騎馬武者軍団を、信長が火縄銃三段撃ちでばたばたとなぎ倒す」 といったものだろう。
この本はそういった戦国時代の鉄砲の使用に関するイメージを一気に打ち崩す。
まず長篠に関して言えば、騎馬軍団といったものがそもそも存在しないのだという。
戦国時代の騎馬武者たちは戦闘時は馬を後方につないで下馬して戦い、追撃戦に移行してから 乗馬していたらしい。三段撃ちも、資料の出展をあさってみると江戸時代の講談が始まりであり、 旧日本軍の陸軍参謀本部が支持したりしたせいでいつの間にか歴史家さえも盲信するようになって しまったのだそうだ。
作者の主張はこれに留まらず、そもそも戦国時代に白刃きらめく白兵戦は殆どなかったとまで言う。
軍忠状で負傷理由を調べ、だんとつで鉄砲や弓といった遠戦兵器による負傷が多い事を示されては ぐうの音も出ない。
しかし全く白兵戦がなかったというわけではなく、遠戦兵器で負傷したり死亡した敵の首を取ろうとして 取らせまいとする敵と白兵戦というパターンが多かったらしい。
結局こういった主張というものは、自分の意見にあうように資料を解釈しまとめたものなので絶対の 正しさというのは決められないものなのだが、それにしても今まで自分が抱いていた戦国時代の戦闘の イメージは何から何まで正しい訳ではないのではないかと考えさせられる本だった。

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