部屋に入るとそっと顔をのぞきこみました。
今日はどんな子なのかだけ見て帰ろうと思って
いたのです。部屋の中は月明かりに照らされて
いました。このくらいの明るさならおばけでも
平気です。

「トン吉まずいよ。起きちゃったらどうするん
だよ」

 ジンベイは心配顔です。トン吉はそんなこと
おかまいなしにのぞきこみました。そのとき
です。寝ている人の目がぱっと開きました。

「きゃあ!ど、ど、どろぼう!」
 大変です。しかも相手は男の子ではなくお母さん
です。ふたりは慌てふためき、壁を通り抜けて隣の
部屋へ逃げ込みました。

少ししてバタンという大きな音とともにバットを
持ったお父さんが逃げ込んだ部屋へ入ってきました。

「ひろし!」
 お父さんが叫びます。
「どうしたのお父さん?」
 眠そうに目をこすりながら男の子が言いました。
「どろぼうだよ!この部屋に入ってこなかったか?」
「ううん、だれも来ないよ」
「そっか。危険だから隣のお母さんのところへ
行っていなさい」

 お父さんはそう言うとバットを持ってほかの
部屋へ行ってしまいました。それを見てひろしは
ほほ笑みました。

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