胸をドキドキさせながら箱のふたをあけると、
中にはただ紙が一枚入っているだけでした。
『桜じいさんこそわれらの宝』
紙にはこう書かれていました。みんなはおたが
いに顔を見合わせ、それから桜じいさんを見上げ
ました。そしてたしかにそうだと思いました。
この町の人たちは、生まれたときから桜じいさんに
見守られ、春には美しい花を見せてもらい、雨の
ときや夏の日差しが強いときは、葉がかさになって
くれました。三にんは大切な宝物にありがとう、
これからもよろしくおねがいしますと、言いました。
「宝物はあの桜じいさんの足もとだ!」
しげるくんがこうふんして言いました。
町のシンボルは、ずっとずっと昔からいたので
みんなから桜じいさんとよばれています。
三にんは足もとにかけより、手でいきおいよく
土をほりはじめました。木の根もとということで、
土の中は根っこがくもの巣のようにもじゃもじゃと
からみあっています。傷つけてはいけないと、
まるで化石をほりだすときのようにしんちょうに
土をのけていきました。みな一言もしゃべりません。
やがてティッシュペーパーくらいの大きさの箱が
すがたを現しました。
「やったー!」
いっせいにかんせいがあがります。