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ボアアーン
  スーッとひんやりした風(かぜ)が
吹き抜(ふきぬ)けたかと思うと、
一瞬(いっしゅん)にして今までのあたた
かさが消(き)えました。一体(いったい)
なにがおこったのか、目をつむっている
リボンには見えませんでしたが、なにかと
なにかがが取っ組(とっく)みあっている
ような音が大きな耳に入ってきました。

「このやろう、よくもリボンちゃんのお父さんと
お母さんをひどいめにあわせやがったな!
許(ゆる)さないぞ!」

  どこかで聞いた声、そう間違(まちが)い
なく今まで話していた家のペペロのものだわ。
リボンは勇気(ゆうき)をふりしぼって目を開き
ました。
野良犬の上にのしかかり、必死(ひっし)で
戦(たたか)う一匹(いっぴき)のたぬきの
すがたがありました。

「わ、悪(わる)かった。もうかんべんしてくれい」
  たぬきのあまりの迫力(はくりょく)に、野良犬の
先程(さきほど)までのおそろしさはどこかへ消(き)
えていました。たぬきはいかりで体をブルブル震わ
せ、目からは涙(なみだ)がポロポロ流(なが)れでて
います。やがて野良犬は命からがら山の奥(おく)へと
逃(に)げていきました。