「いやあおどろかしてごめんなさい。あなたと
お話(はな)ししているぼくはこの家ですよ」
「え!家さんがお話ししているの?」
うさぎはびっくりしすぎて声がうら返(がえ)って
しまいました。
「そうです、ぼくは家です。雨がやむまでどうぞ
ごゆっくりしていってください」
うさぎはおそるおそる中に入りました。ところが
心配(しんぱい)とは反対(はんたい)に、中に
入ったとたん、どこかで味(あじ)わったことの
あるような安心感(あんしんかん)に包(つつ)まれ
ました。でもどこで味わったものなのかどうしても
思いだせません。外ではあいかわらずはげしい
雨がふっています。
「いやはやずぶぬれではないですか。急(いそ)
いで家の中をあたためますのでしばらくおまち
ください」
まるいまどと、屋根(やね)と、茶色い
ふさふさのじゅうたんがしかれているほかは、
家の中にはなにもありませんが、部屋(へや)は
だんだんあたたかくなってきました。
「ふしぎい、ストーブがないのにどうして、家さん?」
うさぎはまわりをきょろきょろしながらたずねました。