おばあちゃん私が生まれたときとても喜んでくれたんだ。知香は今日までそのことを知りませんでした。そして今までおばあちゃんに悪いことをしてしまったなという思いと、うれしいという思いが込み上げてきました。 「ありがとう、おばあちゃん!」 今度は心から言うことができました。 「チューリップが、おばあちゃんと知香の心をかたく結び付けてくれたね」 お父さんが優しく語り、知香とおばあちゃんはお互いに顔を見合わせ、ほほ笑み合いました。 |
四月になりました。春休みが終わり、知香は今日から五年生でもあり、十一歳でもあります。そう誕生日です。夜、家族で誕生日会を開きました。知香はお父さんからプレゼントをもらって大喜びです。そこへおばあちゃんが入って来ました。手には何か持っています。 「知香ちゃん誕生日おめでとう、はいこれおばあちゃんからのプレゼント」 手にしていたものを知香に渡してくれました。それはあの、おばあちゃんがずっと大切にしていた鉢植えで、それにはきれいでかわいい赤いチューリップが咲いています。 「ありがとう・・おばあちゃん・・・」 知香はそのチューリップがとても気に入りました。しかしおばあちゃんに素直に喜びを伝えることができません。 「知香ちゃんの誕生日というとチューリップを思い出すんだよ」 おばあちゃんはやさしく言いました。 「そうそう、知香が生まれた日は病院の庭や近くの公園は、チューリップが満開だったわね、おばあちゃんったら知香が生まれたっていうんで、とても大喜びして、両手で持ちきれないほどのチューリップを持って来てくれましたね」 おかあさんがなつかしそうな顔をして言いました。 |
おわり