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「そういえばカメは元気かい?」
「え、あ、うん」
  はやとは言葉がつまった。まさか世話を
さぼっているとは言えない。

「そりゃあよかった。はやとは優しい子だからな。
これもいらぬ心配だったな」

  はやとはおじいちゃんを見ることができな
かった。あ、でも家にきたらさぼっているのが
ばれちゃう!心臓がどきどき鳴り出した。

「それじゃあそろそろ帰るとするかな。はやと、
おまえが孫でいてくれて本当によかった。
ありがとな」

  おじいちゃんは背を向けると、もと来た道を
歩き出した。

「おじいちゃんうちにこないの?」
  おじいちゃんの家は電車で三駅も離れている。
ここまできてうちにこないなんて何でだろう?
おじいちゃんは何も言わず去ってゆく。足元は
とぼとぼなのに、なぜかみるみると姿が小さく
なる。はやとは不思議な気持ちでおじいちゃんの
後ろ姿を見送った。