はやとは商店街へ行くとしんに事情を話し、
言葉通りすぐに戻ってきた。おじいちゃんは
学校の校庭に植えてある桜の木を見上げていた。
今は五月、花はとっくに散り、青々とした葉が
午後の陽に反射して輝いている。はやとは
自転車から降り、おじいちゃんの横に並んだ。
「覚えているかい。おまえが入学したとき、見事な
花をこの木は咲かせていたなあ」
「うーん、覚えてないや。でも今年もきれいな花を
咲かせてたよ」
「そうかそうか」
おじいちゃんはうれしそうに二度うなずいた。
「ここで一緒に写真とったなあ。あのときはおまえに
友達ができるのかと心配してたが、どうやらその
必要はなかったみたいだ」
「うん!友達たくさんいるよ!」
おじいちゃんはこれを聞くと、またうれしそうに
うなずいた。